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shower snow after chocolate(前)

あああ、バレンタイン間近だ~!と大焦りで書いてます。
 風邪っぴき月真です。
 皆様はお風邪をめされてないでしょうか?

 頑張って書いてはいるのですが間に合わなかったら悲しいなぁと先に前半をあげるこすいわたし……
 なんだか随分久しぶりに距離が近すぎない燈可奈を書いた気がします……
 いや、気がするんじゃなくて、実際ソウデスネ。。。
 いちゃいちゃしてるの描くの楽しくてお絵かきしまくってたので。
 超新鮮でした。


 明日は関東、大雪の恐れだそうです。またかよぅ。

そんなわけなので、この前描いたのを貼っておきます。




 「水原先輩」
 ちょっといいですか、と教室の外から声がかかる。
 聞き覚えのない、可愛らしい感じの高い声だった。

 他のクラスの子やら他学年の生徒やらに色々頼まれごとをされるのは日常茶飯事だったため特に深く考えず、呼ばれた声にはいよ、と可奈は声を返す。
 机の上は、前の授業のそのままに。
 急ぎだったら悪いかな、と。

 廊下に出てみると、可奈より一回り近く身長の低い生徒が待っていた。高校生にしては小柄な部類に入るだろう。左右二つに結いた髪が、幼さを強調している。
 くるんと丸い瞳が、小動物を連想させた。
 可愛い。
 これで私と同じ生き物なんだから神様は残酷だ、と可奈は内心ちょっと嘆いた。
 「私呼んだの、あなた?」
 気を取り直して、声をかける。
 見たことのない子がやってきて、頼みごとや相談事をされる。
 それは、可奈自身への頼みごとも勿論、可奈を通じて燈馬へとりなして欲しい、という類のものもあった。
 さて、今回は難事件なんだろうか、肉体労働なんだろうか。
 どちらにせよ、あんまり面倒臭いものでなければいいなぁ、と、特に身構えもせずに、少女からの話を見つめながら待った。


 「あの、燈馬先輩につきまとうの、やめてくれませんか?」

 少女は、真っ直ぐに可奈の目を見ながら言った。
 発せられた言葉は想像もしていなかったものだったので、可奈は二呼吸分ほど、思考が停止した。



 「……はぃ?」
 思わず、聞き返す。
 え?燈馬君?つきまとう?
 耳に入った言葉に頭が対応しきれなくてぐるぐると回る。
 「水原先輩って、燈馬先輩の何なんですか?」
 そんなことはお構いなしに、少女は重ねて可奈を問い詰める。
 「先輩自身が付き合ってないって言ってるの、知ってるんですよ」
 それなのに、いつも一緒にいるじゃないですか、と。
 批難めいた声で、言われる。

 放課後前とはいえ、ただの休み時間で廊下は次の授業の準備や移動でひっきりなしに人が行き交う。
 そんな中で、こんな話をすればどうなるか。
 可奈が見回すと、触らぬ神にはなんとやら、といった様子で顔ごと目を逸らす生徒が多数。目を逸らしたってどうせ聞き耳立ててんだろ、とつっこみたいのをぐっと飲み込む。あとでお前ら覚えてろ。
 幸いなのは、当事者である燈馬はこの場にはいない、という事か。

 情報を整理してみるに。
 彼女の中では、私が彼女でもないのに燈馬君につきまとっていると。
 抗議しに来てるということは、相当目に余る行為に見えたのだろうか。
 んー、他人から見てどう思われるかとか、そんな風に思ったことなかったなぁ。
 
 普段なら付き合ってるのか云々の話をされると逆上炎上するところなのだが、あまりにも最初のアプローチが唐突過ぎて、逆に普通に可奈は受け取れた。
 「あー……うん、付き合っては、いないね」
 もごもごと、口の中で言葉が踊る。
 口に出したものの、なんとなく、腑に落ちない。
 気持ちが悪い。
 落ち着かない。 
 なんでだろう、と多少は疑問に感じるけれど、まぁ大したことではないかなと無視をした。

 そんな腹の中のやりとりに気を取られている隙に。
 「わたし、燈馬先輩のことが好きです」
 食ってかかるように、唐突に宣言された。

 興奮しているのか、彼女の高い位置で結んだ髪がぴょこん、と大きく息を吐いた拍子に揺れる。
 可奈は気圧されて、意図せず、体が半歩後ずさった。
 「水原先輩は、好きじゃないんですよね?」
 言質をしっかり取ろうと、聞き逃すまいとぎょろりと睨む視線が痛い。
 小動物のようだ、と思った先ほどとは違い、目つきだけは、肉食獣のようで。
 可愛い顔をしているのに、真剣で、怖い顔。

 「え、あ、う、うん……」
 その気迫に押されるように、ため息のように返事が漏れる。

 肯定としかとれないそれは、本心というより成り行きでついてしまった呼吸のようなものだったけれど。勢いづいた彼女には一番の戦利品だったらしく、勝ち誇ったように鼻で笑った。
 「本当ですね? 本当に、燈馬先輩の事、好きじゃないんですよね!」
 「……」
 そうだ、とも、違う、とも言葉が出なかった。
 出すつもりもなかった、先ほど漏れてしまった音が気になって。
 焦るように目が泳ぐ可奈を尻目にくるりと、少女は踵を返して歩き出す。
 「それでしたら、邪魔しないでくださいね」
 用事は済んだと足取り軽く。
 可奈はそんな跳ねる二つのしっぽを眺めた。


 見上げられた双眸は、睫毛は長いわ、大きいわ、形がいいわ。
 仕草も女の子らしいし、なにより小さくて可愛らしい。
 怖いくらいにつっかかって来たのも、特有の牽制だと良く解った。
 ふわりと甘いお菓子のような残り香に、可奈はただただ呆然と背中を見えなくなるまで見つめ続けた。
 「邪魔、かぁ……」
 考えたこともなかったなぁ、と、可奈は心中でため息をついた。
 あのぼーっとしてて何考えてんだがわかんないような燈馬君に近づきたがる人間がいるなんて。よもや恋愛感情まで持たれるなんて。そんでもって、自分が恋の障害なんだと言われるとは。

 ふと、燈馬とさっきの少女が並んで立っている所を想像してみる。
 平均より小柄な燈馬でも、小さめな彼女なら確かに釣り合いが取れるかな、と思った。
 自分はというと、どちらかというと女子でも高めの身長で燈馬と同じくらいだ。
 靴によっては自分の方が明らかに高くなる。
 別に、気にしたことはなかったけれど。

 良かったじゃん、燈馬君。
 燈馬君の事好きになるもの好きなんて、これ以降現れないかもだよ!
 しかも可愛いしいう事無しじゃん、羨ましい。

 とは、思うものの。
 それを口に出せる気がしない。
 胸の中に一片、何かが引っかかるような気持ち悪さを感じて、これはなんだろう、と考える。
 けれど、答えは思いつかなくて。

 とりあえずは、不快感をそのままに。
 教室に戻って次の授業の準備をすることにした。
 多分、こんなものはすぐに忘れてしまうんだろうなと、安直に考えて。
 
❄  ❄  ❄  ❄  ❄
 屋上に迎えに行くというのがもう日課になってるな、と、気がついたのは階段を上りきった後だった。
 扉を明ける前にふと数時間前のことを思い出し、気が重くなる。
 つきまとわないでください、と言われたそばから、またこんな。
 いやいや、でも、鞄やなんかは教室に置きっぱなしだったから渡さないと燈馬君帰れないし、と言い訳を必死に考える。
 なんで言い訳を考えなきゃいけないんだ、燈馬君の事なのに、とだんだん理不尽に思えてきて腹立たしくなってきて、最終的には考えるのを止めた。
 意外と重い屋上の扉を開け、給水塔の辺りに声をかける。
 ひょこり、と燈馬の頭が覗く。
 「鞄とか持ってきたよ。忘れ物」
 わざわざすみません、と、降りてくる燈馬の背を見つめ、また先ほどのやりとりを思い出す。荷物を受け取ろうと近寄り、手の中の物に触れるが、可奈はそのまま固まっている。
 「水原さん、どうしたんですか?」
 声をかけられて我に返る。
 至近距離に顔があり、どきんと心臓が痛いくらいに跳ねた。
 そのまま、体まで仰け反りそうなのを懸命に堪える。
 気にしてない風を装って、燈馬を見つめ直す。
 内心がこんなに慌てているなんて、悟られてはいけない、と。
 何故かは解らないけれど、そうするべきだと本能で思った。

 「私さ、燈馬君につきまとってるかな?」
 「……急にどうしたんですか?」
 真面目な顔で急に変なことを言う、と、燈馬は怪訝な顔で伺う。
 「いやー、宣戦布告をされちゃったというか」
 「?」
 難しげな顔で頭を掻く様子に燈馬は首を傾げるしか出来なかった。
 言い出しづらい話題なのか、話を振った本人はそのまま、次の言葉を出さずに目を泳がせていた。
 宣戦布告。
 穏やかではない話題だな、と思う。
 それは、「燈馬君につきまとってるかな?」に付随するものなのだろうか。
 可能性を考えてみて、思い至った結論に頭を振った。
 そんな恐ろしいことを実行できる人間なんて想像できない。
 水原さんに、自分と付き合ってるかどうかという、話題をふるような人間なんて。


 「燈馬君は、……こうやって、私と、話したりしてるの……どうよ?」
 非常に言いづらそうに言葉にした、その顔を見る。
 単純な可奈が、珍しく思考の迷路に陥っているのが見て取れた。
 いつも真っ直ぐ、痛いくらいの強い視線を投げてよこすのに面影なんて今は無く、ただ何もない空間を見つめ続けて睨んでいる。
 随分思い切った勇者が居たのだな、と変に感動してしまう。
 ここまで思い悩ませることが出来たんなら、その勇者も本望なのではないかと。
 「いえ?これといって不快とか迷惑に感じたことはあまりないですけど?」
 自然、笑みが溢れた。
 貴重な可奈の思い悩む姿が見られたのも幸運で。
 そんな事でいっぱいいっぱいになってくれている可奈も愛おしくて。
 ついつい、口角が上がってしまうのが自分で解った。
 可奈がこちらを見ていなくて良かったと、内心ほっとする。
 
 ……あまりということは、たまにはあるのか。
 燈馬を見ないまま、可奈は言葉尻をひどく気にした。
 まぁ、確かにね。
 いっつも引っ張り回したり、無理矢理ついていったりしてるのは自覚してるよ。
 歓迎されてないなぁって感じることも結構あったし。
 大体において「人使いの荒い人だなぁ」とかため息混じりで応えてくれるから、そんなに悪い気はしてないのかと思ってたよ。勝手に。

 段々、可奈自身が腹立たしく思えてきた。
 考えれば考えるほど、無神経だったなぁと自分の行動に駄目出しをしてしまう。
 たまには、放っておいた方がいいのだろう。
 その方が、きっと燈馬の為になるだろう。
 その方が。
 多分、いい。


 「うん、よし、決めた」
 大きく、可奈が頷いた。
 「私、しばらく燈馬君と一緒にいるのやめるわ」
 結論が自分で導き出せて気分がいい。すっきりした。
 はずなのに。
 忘れかけていた胸の引っ掛かりが自己主張をまた始める。
 その結論は認められないとでも言うように。
 いやいや、いいんだよコレで。
 どう考えたって私は邪魔者なんだし。

 どうして、こんなにももやもやとして息苦しいのか。
 嬉しい筈なのに。
 燈馬君が、年相応に、年相応の楽しみを得るんだよ。
 不服なんてあるはずないのに。
 これは、私がずっと望んでたはずなのに。

 どうしても、理解できないその破片を閉じ込めて、蓋をする。
 きつくきつく、幾重にも。
 燈馬君ほど洞察力も何もかも持ち合わせてはいないから、自分自身でさえ解らない。
 だったら、考えない方がラクだ。
 そうやってしまいこんでいれば、いつか忘れ去ってしまうだろう。


 「どうしたんですか、急に」
 思いもよらない宣言をされたせいで、燈馬は思わず声を上げた。
 言いにくそうな話題の中に、自分と離れた方がよい、といった要素があったのだろうか。
 「んー、色々思うところがあるんだよ」
 ばんばんと、肩を叩かれる。
 その様子は今までと全く変わらず、恐ろしいくらいに普通だ。

 一体どういう論理で、その結論が導き出されたんですか?
 そもそも、まず、どんな問いが出されたんですか?
 訊きたいけれど、有無を言わせない様子で。
 可奈は荷物を次々と燈馬に押し付け、じゃあね!と手を振り、駆け出した。
 燈馬は渡された荷物を抱え、あの、と声をかけるが、もうそこには可奈の姿は無かった。


 「……水原さんと一緒にいられない方が、不快なんですけど……」

 ぽつりと呟いてみても、受け取る相手はもう階下に降りてしまっただろう。
 はぁ、とため息が漏れる。
 本当にしばらくの間、可奈は近づいては来ないだろう。
 喧嘩したりして気まずい時などは一週間と堪えられずに突っ込んでくる可能性があるけれど、自分でその選択肢を導き出したとしたら。

 ずっと持っていたため、渡された荷物には微かに可奈の体温が残っていた。
 残った暖かさを噛み締めながら、燈馬は再度、深いため息をついた。
❄  ❄  ❄  ❄  ❄
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