あかねいろ。

『見てないけど』

　「だーれだ」
　と視界を遮られる。
　誰も何も、こんな事をするのは水原さんしかいない。答えると不満げな声が上がった。
　「仕方ない、第二問、何を持ってるでしょうか？」
　と目隠ししたまま問われる。

　甘い香りだ。
　五時間目は家庭科で、今日は調理実習で。作るものは、確か。


　答えると同時に、それを口に詰め込まれた。


『どこか知らない場所へ』

　どこか知らない場所に二人きりで置かれても、こいつと一緒なら、多分なんとかなるだろう。
　いつものようについてきた海外で、いつも通りにそう思う。

　頭だけじゃ解決できないことなら、私がやりゃいい事だし。
　任せて貰えるくらいには信頼されてるし、してる。

　トラブル慣れしてるなぁ、と我ながら、思う。



『生き方は似ているのです』

　性別も考え方も、倫理観も価値観も違う。
　そのことで頭を悩ませることもあれば、救われることもある。
　不満なんてある訳ない。

　それに一つだけ、同じ所がある。
　自分の中に明確に存在する答えを持つと、誰にも譲れない、真っ直ぐな所だ。

　行き着く先は違うかもしれないけれど、きっと生き方は似るのだろう。



『全部全部、君のせい』

　正直、私はここまでお節介焼きではなかったはずだ。
　自分の出来る範囲で手出しして、出来ないものは正直に出来ないと言う。
　まぁ出来る人間を探す手伝いくらいはするけど。

　燈馬君が悪い。

　どうにかする知恵を出すから私の出来る範囲が広がった。
　二人で居ると何でも出来る気になる。

　だから、あいつが悪い。



『こりないやつ』

　「懲りないなぁ」
　目を開くと空を背負った可奈が笑う。
　「カマキリの機嫌損ねるの何回目？」
　言いながら紙パックを投げつけられ、慌ててキャッチをする。
　「間違っている式が悪いんです」
　とストローを刺しながら呟くと、まぁお陰で今回は自習になったしね、と隣に座った。

　こんな事もあるから、懲りるつもりはない。



『貴方の心臓が欲しい』

　興味が私に向くのなら何だってするのに。
　私より数字の羅列が大事なのは解ってる。
　解りきっているから悔しい。

　一番になるためにどうすればいいんだろう？
　脅したって、宥めたって、褒めたって、貶したって、敵う筈もない。
　血の一滴まで、多分数字だ。

　心臓を抉り取ってしまえば、私を見てくれるだろうか？