This drunkard!③
はい。三回で終わりませんでした。
いつもどおりですね!
後になればなるほど、セリフ間の描写が細かくなっていきます。
セリフ多いのにね。
漫画的にセリフを増やすからこんな目に。
次!次で絶対終わらせます終わってください、と願いつつ。
衣服を身に纏い、禄に顔も見ないまま、場所をリビングに移すことにし、寝室を後にする。
あまりにも生々しく跡が残りすぎていて、あの部屋には居づらかった。
お通夜みたいだ、と可奈は内心嘯く。
お互いに気まずいのは当たり前だ。
どうにも重い空気に耐えきれず、とりあえず、コーヒーでも入れようか、と可奈は席を立とうとするも、想にいいですから、僕がやりますと座らされ、気まずい沈黙の中ただ呆然と待つしかなかった。
確かに、そりゃ、まぁ、動きづらいよ。
気を使って貰えるのはありがたいよ。
でも、正直、こういう扱いをされると、余計に昨日あった事を意識しちゃうというか。
……いっそ記憶が飛ぶぐらい酔っていればよかったものを。
穴があったら入りたい気分、というのは、今、この瞬間の気持ちだと、心底思う。
二人分淹れ終えた想が、コーヒーを持って可奈の前に立ち、どうぞと差し出した。
可奈は座ったまま、受け取ろうと何の気なしに見上げた。
起きてから、真っ直ぐ顔を見るのは、これが初めてだった。
不意に、昨晩聴いた想の、切なげに呼ばれる声が、顔が重なる。
みずはらさん。
聞こえた気がして心臓が跳ねる。
……重症だ。
まずい、と可奈は受け取るより先に視線を逸らした。
もう頭に血が上ってしまい、昨晩の出来事に染まってしまって何も考えられない。
そう、男でもあんな声出すんだ、と妙に感動したんだよな、この酔っ払い女は!
自分なんか、その何倍も声上げてたくせに。
そこまで思い出してしまい、非常にいたたまれない、逃げたい気持ちになる。
恥ずかしいし気まずいし、何より燈馬君がこんな反応してる私をどう思うか。
「水原さん?」
怪訝な顔で覗きこむ顔に、更に心拍数が上がる。
そんな至近距離で、呼ばれたら。
「ごめん、しばらく顔見ないで……」
顔を抑えて、俯く。
どんな顔をすればいいのか、というレベルではなくて、どうすれば普段通りの状態に戻れるのか、そういった類の問題になっている。
自分がそういった意識に囚われてしまう人間だとは思わなかった。
どちらかというと、そういったものには淡白な方だと思っていたのに。
再び冷たい汗が吹き出すのを背筋に感じ、途方に暮れる。
自分の事で手一杯だ。
想がどう感じようが、関係ない。
「……大丈夫ですか?」
背中に手が回され、優しく摩られる。
気分が悪くなったと勘違いされたのだろうか、と指の間から、ちらりと想を覗いてみる。
案の定、心配そうな顔でこちらを見ていた。
違うんだよ、そうじゃないんだよ、あぁ、いやでも、気分というか、心持ちが悪いか。
そう心の中で呟ける余裕が出来たことを感じ、可奈は重くて重くて上手く言葉が出なかった口を、開いた。
「何したか、何されたか、……燈馬君は全部覚えてる?」
若干の間。
思い出しているのか、それともどう答えようかと迷っているのか。
可奈は自分の顔を手で覆っているため、表情は見えない。
けれど、どうせ表情を見たところでそこから想の思考を読み取れるわけでもない。
コチコチと鳴る秒針の微かな音を聞きながら、答えを待った。
「一通りは……」
想は言葉を選び、口にする。
どう言おうが、与えるショックは変わらないだろうが、せめてもと。
しかし、どう選ぼうとも、傷つけることは予想できた。
可奈がどの程度覚えているのかは解らない。
出来ることならば言わなくてもいいところは言わず、自分だけが悪いという風に持っていきたい所だけれど。
反応を見た限りでは、それも望み薄、と言った手応えだ。
あぁ、水原さんも。
大体覚えているんだろう。
胸が痛いような詰まるような、微かに踊るような心持ちは、どうにも形容し難く渦巻く。
自分でも感情を制御できず、泣きたい気分だ。
……うわ、最悪だ。
たったの六文字、耳にしただけなのに。
頭がガンガン痛い気がすると、可奈は改めて頭を抱えた。
自分で思い出している分だけでも、かなり醜態を晒している気がするのに。
一通りってことは、最初っから一通りなんだよな。
もう、どうしようもなく恥ずかしい。
顔向けできない。
半分泣きながら頭を振るが、それで事態が好転するわけでもない、というのは解っている。
解っていても、それならどうすればいいのか解らない。
ただ、動いて気持ちを発散させているだけの、作業だ。
動力が切れれば、多分、落ち着く。
そう願いながら。
声にならない声を無音で上げつつ、可奈はじたばたと照れ隠しで動くままにすることにした。
「……すみません、こんなことになって」
背中を摩る、手が止まる。
抱え込まれるように肩を抱かれ、動きを止められた。
抱き竦められた格好になり、少し落ち着いたはずの胸がまた爆ぜる。
が、すみません、の一言を反芻し、頭の中が一気に冷えた。
今、欲しいのは謝罪の言葉じゃない。
このまま言葉を続けさせてはいけないと、本能で感じ取る。
このままでは、多分。
想定していた事態になる。
それだけは、どうしたって嫌だ。
「待った。謝るのなし。責任とるとかそういうのもなし」
顔を上げて、隣を見据える。
「第一、……燈馬君のせいじゃないじゃない」
真っ直ぐ見た想の顔は、信じられない、といった風だった。
男性からしたら、そういうものなんだろうか。
でも、どう思い返したって、起点は。
「私が、……迫ったんじゃない」
私が、燈馬君が何度も何度も、意思確認をしてくれていたのに。
勢いだけで、キスして。
煽ったんじゃないか。
もうこれ以上は、という予防線を、何度も何度も踏み越えた私の方こそ、責任がある。
燈馬君は、全然悪くないんだ。
いつもどおりですね!
後になればなるほど、セリフ間の描写が細かくなっていきます。
セリフ多いのにね。
漫画的にセリフを増やすからこんな目に。
次!次で絶対終わらせます終わってください、と願いつつ。
衣服を身に纏い、禄に顔も見ないまま、場所をリビングに移すことにし、寝室を後にする。
あまりにも生々しく跡が残りすぎていて、あの部屋には居づらかった。
お通夜みたいだ、と可奈は内心嘯く。
お互いに気まずいのは当たり前だ。
どうにも重い空気に耐えきれず、とりあえず、コーヒーでも入れようか、と可奈は席を立とうとするも、想にいいですから、僕がやりますと座らされ、気まずい沈黙の中ただ呆然と待つしかなかった。
確かに、そりゃ、まぁ、動きづらいよ。
気を使って貰えるのはありがたいよ。
でも、正直、こういう扱いをされると、余計に昨日あった事を意識しちゃうというか。
……いっそ記憶が飛ぶぐらい酔っていればよかったものを。
穴があったら入りたい気分、というのは、今、この瞬間の気持ちだと、心底思う。
二人分淹れ終えた想が、コーヒーを持って可奈の前に立ち、どうぞと差し出した。
可奈は座ったまま、受け取ろうと何の気なしに見上げた。
起きてから、真っ直ぐ顔を見るのは、これが初めてだった。
不意に、昨晩聴いた想の、切なげに呼ばれる声が、顔が重なる。
みずはらさん。
聞こえた気がして心臓が跳ねる。
……重症だ。
まずい、と可奈は受け取るより先に視線を逸らした。
もう頭に血が上ってしまい、昨晩の出来事に染まってしまって何も考えられない。
そう、男でもあんな声出すんだ、と妙に感動したんだよな、この酔っ払い女は!
自分なんか、その何倍も声上げてたくせに。
そこまで思い出してしまい、非常にいたたまれない、逃げたい気持ちになる。
恥ずかしいし気まずいし、何より燈馬君がこんな反応してる私をどう思うか。
「水原さん?」
怪訝な顔で覗きこむ顔に、更に心拍数が上がる。
そんな至近距離で、呼ばれたら。
「ごめん、しばらく顔見ないで……」
顔を抑えて、俯く。
どんな顔をすればいいのか、というレベルではなくて、どうすれば普段通りの状態に戻れるのか、そういった類の問題になっている。
自分がそういった意識に囚われてしまう人間だとは思わなかった。
どちらかというと、そういったものには淡白な方だと思っていたのに。
再び冷たい汗が吹き出すのを背筋に感じ、途方に暮れる。
自分の事で手一杯だ。
想がどう感じようが、関係ない。
「……大丈夫ですか?」
背中に手が回され、優しく摩られる。
気分が悪くなったと勘違いされたのだろうか、と指の間から、ちらりと想を覗いてみる。
案の定、心配そうな顔でこちらを見ていた。
違うんだよ、そうじゃないんだよ、あぁ、いやでも、気分というか、心持ちが悪いか。
そう心の中で呟ける余裕が出来たことを感じ、可奈は重くて重くて上手く言葉が出なかった口を、開いた。
「何したか、何されたか、……燈馬君は全部覚えてる?」
若干の間。
思い出しているのか、それともどう答えようかと迷っているのか。
可奈は自分の顔を手で覆っているため、表情は見えない。
けれど、どうせ表情を見たところでそこから想の思考を読み取れるわけでもない。
コチコチと鳴る秒針の微かな音を聞きながら、答えを待った。
「一通りは……」
想は言葉を選び、口にする。
どう言おうが、与えるショックは変わらないだろうが、せめてもと。
しかし、どう選ぼうとも、傷つけることは予想できた。
可奈がどの程度覚えているのかは解らない。
出来ることならば言わなくてもいいところは言わず、自分だけが悪いという風に持っていきたい所だけれど。
反応を見た限りでは、それも望み薄、と言った手応えだ。
あぁ、水原さんも。
大体覚えているんだろう。
胸が痛いような詰まるような、微かに踊るような心持ちは、どうにも形容し難く渦巻く。
自分でも感情を制御できず、泣きたい気分だ。
……うわ、最悪だ。
たったの六文字、耳にしただけなのに。
頭がガンガン痛い気がすると、可奈は改めて頭を抱えた。
自分で思い出している分だけでも、かなり醜態を晒している気がするのに。
一通りってことは、最初っから一通りなんだよな。
もう、どうしようもなく恥ずかしい。
顔向けできない。
半分泣きながら頭を振るが、それで事態が好転するわけでもない、というのは解っている。
解っていても、それならどうすればいいのか解らない。
ただ、動いて気持ちを発散させているだけの、作業だ。
動力が切れれば、多分、落ち着く。
そう願いながら。
声にならない声を無音で上げつつ、可奈はじたばたと照れ隠しで動くままにすることにした。
「……すみません、こんなことになって」
背中を摩る、手が止まる。
抱え込まれるように肩を抱かれ、動きを止められた。
抱き竦められた格好になり、少し落ち着いたはずの胸がまた爆ぜる。
が、すみません、の一言を反芻し、頭の中が一気に冷えた。
今、欲しいのは謝罪の言葉じゃない。
このまま言葉を続けさせてはいけないと、本能で感じ取る。
このままでは、多分。
想定していた事態になる。
それだけは、どうしたって嫌だ。
「待った。謝るのなし。責任とるとかそういうのもなし」
顔を上げて、隣を見据える。
「第一、……燈馬君のせいじゃないじゃない」
真っ直ぐ見た想の顔は、信じられない、といった風だった。
男性からしたら、そういうものなんだろうか。
でも、どう思い返したって、起点は。
「私が、……迫ったんじゃない」
私が、燈馬君が何度も何度も、意思確認をしてくれていたのに。
勢いだけで、キスして。
煽ったんじゃないか。
もうこれ以上は、という予防線を、何度も何度も踏み越えた私の方こそ、責任がある。
燈馬君は、全然悪くないんだ。
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