あかねいろ。

『空腹に効くクスリってありますか』

　部活帰りは腹が空く。
　買い食いしたくも財布はピンチ、あったとしても夕食前。
　「燈馬君、空腹の紛らわせ方いいのない？」
　とダメ元で尋ねると、思案すること十数秒。
　「紛れればいいんですよね？」
　そう問われうんうん頷く。
　立ち止まり、下駄箱の陰に引き込まれ。
　押し当てられた唇に驚き息を飲んだ。
　「紛れましたか？」

『こんなにも愛されている』

　気付くと外は仄暗い。
　思考に耽ると時間が早いと思いつつ、調光した覚えのない天井を見る。
　時刻は十七時。
　「やっと戻って来た？」
　こちらに気付いて可奈が微笑む。
　「もう遅いし燈馬君食わせてから帰る」、と明るい笑顔。
　何時間待たせたのかと胸が跳ねる。

　暖かい料理の香りを感じながら、愛しい背中を抱きしめた。




『絶対絶命』

　何気無しに近寄る顔に心拍数が上がる。
　今まで気にも留めてなかったのに。
　もう1cmも近づけば、気持ちが溢れ出てしまう。
　数式を解く指先も、説明をする声も、見ても聞いても内容が頭に届かない。

　あぁ、気付かなければ良かった。
　どうしよう。
　好きで好きで、好きすぎて。
　胸が苦しくて死んじゃいそう。




『二人だけの王様ゲーム』

　酸っぱい方がハズレだよ、と差し出す掌に赤い飴が二つ。
　ハズレは当たりのいう事聞いてよ、と声を聞いたのは放り込んだ後。
　幸いにして当たりらしく、言った当人は口を抑えて悶絶する。
　そんなに酸っぱいものなのか。

　「じゃあ、当たりなんで水原さんの飴の味見をさせてください」
　と、了承を待たずに口付けた。