君ありて幸福。
先日スカイプでお話させていただきまして、お題を頂いて書いたものです。
pixivにアップしていたのですが、こちらにも。
お題は花言葉ということだったのですが、花言葉とかあんまり知らない系ガッカリ女子なので(爆
は、花の名前とか見た目が綺麗だなぁってことが認識できればそれでいいじゃん!
(まるで可奈ちゃんみたいだな……)
「水原さんの誕生日って4月3日でしたよね?」
「ふぇ?」
唐突に言われて変な声を上げる。
今はもう冬で。私の誕生日なんてとっくの昔に終わっている。
「……そうだけどさ、どしたの? 突然に」
怪訝な顔をして振り返ると、これです、と開いた本を見せてきた。
「誕生……花?」
辞典のような厚さのある冊子の真ん中よりもちょっと前寄りの辺りを押さえたまま、そっと私に手渡してくる。
「ちょっと用事があって調べていたんですけど」
開いたページにはアスタ-、ニオイスミレ、ラッパスイセン……と写真入りで載っていた。他のページも見てみると、桜やアネモネといった、じつに春めいた花が並んでいる。
「ふぅん、こういうのってあるんだねぇ」
誕生日にも花を割り当てたりとかするんだなぁ、面白い。
自分の誕生日に並んだ花は、ピンクだったり黄色かったり赤かったり、色とりどりだ。
見ているだけで心が跳ねる。
「ニオイスミレなんて、水原さんには正反対だなぁと思って」
言われて、紫の小花の下を見る。
花言葉は、謙虚、謙譲、貞淑、高尚……
「……誰が謙虚じゃないってのよ」
反目で睨むと「ああこれとか水原さんっぽいですね」と今度は水仙を指さした。
神秘、うぬぼれ、我欲、利己主義、自己愛、自尊心……だとぅ。
お前は私をなんだと思ってるんだよ……!
締め落としてやろうかと手を伸ばした時に、燈馬君がそうそう、と小さな鉢植えを出してきた。
産毛の生えた小さな手のひらのような葉っぱの、小さな花をつけたかわいらしい植物が白いプラスチックの鉢にちょこんと収まっている。
「これ、貰い物なんですけど……蚊連草って言うんです。ゼラニウムの一種なんですよ」
かれんそう。
……なんだそれ。
ぽかんとしていると、燈馬君は私にその鉢を押しつけてきた。
「所謂ハーブですね。植物自体が芳香を放っていて、その香り成分が虫除けになるそうですよ。蚊取り草とも呼ばれるそうです」
なるほど。受け取るとふんわりといい香りが漂ってくる。
こんな時期にも関わらず、葉っぱも青々としてしゃっきりしている。
室内だからっていうのもあるかもしれないけれど、それでも冬の始めだというのに花をつけるのはすごい。……春の花じゃないのかよ。
空調は効いていて暖かいにしても、日差しとかそういうのは全然違うはずなのになぁ。
首をかしげながら花を眺めていると。
「あげます。誕生花ですよね」
にこりと笑って手を差し出される。
くれるったって、蚊取り草だろ。虫よけなんてこんな時期に貰ってもなぁ。
心の声が聞こえたかのように、燈馬君はくすり、と笑う。
「なんだかすごく水原さんみたいで、僕は好きなんですよ、それ」
「それは、虫も寄らないってコト?」
それって女の子に送る賛辞としてどうなのさ、とちょっと憤る。
けれど燈馬君はふるふると首を振って、また笑う。
「いいえ、そうではなくて、性質とか、諸々、そういう点が」
性質。
植物と燈馬君を見比べる。
「ゼラニウムって強健なんですよ。枝を切って土に挿しておくだけでも根が出る。生命力に溢れて青々としてて。……いつも元気な水原さんみたいですよね」
生命力に溢れて、青々としている。
燈馬君から見て、私はそういう風に映っているのか。
……それは、まぁ。
わりと、嬉しいかも、なぁ。
「しぶといとか、そういう意味も若干入ってたりすんの?」
照れ隠しにそう一言訊いてみると、まさかそんなと含みのある笑い方をする。
あれ?もしかして図星なんだろうか。
「確かに、それだけじゃないですけどね」
そう言われて、またさっきの本を見る。
ゼラニウムの花言葉は。
尊敬と信頼、真実の愛情、決意、慰安、安楽、追憶、友情、君ありて幸福。
「僕は水原さんを『尊敬』してますし、『信頼』もしてますよ。一緒に居ると『楽しい』ですし『幸せ』です。……ね、水原さんみたいでしょう?」
言って本当に嬉しそうに笑う燈馬君を見せ付けられて……もう、どうしろっていうんだよ!
どう表情を作ればいいのかわからなくて、手の中の白い鉢を見る。
君ありて幸福。
ゼラニウムの花言葉。
──あぁ、そうだな。
燈馬君が『幸せ』でいることは、私も『幸せ』なんだから。
君が居てこその、幸せ。
「こいつ」と私はおんなじだ。
そっとその葉に触ってみたら、すっきりとした甘い匂いが、部屋いっぱいに広がった。
pixivにアップしていたのですが、こちらにも。
お題は花言葉ということだったのですが、花言葉とかあんまり知らない系ガッカリ女子なので(爆
は、花の名前とか見た目が綺麗だなぁってことが認識できればそれでいいじゃん!
(まるで可奈ちゃんみたいだな……)
「水原さんの誕生日って4月3日でしたよね?」
「ふぇ?」
唐突に言われて変な声を上げる。
今はもう冬で。私の誕生日なんてとっくの昔に終わっている。
「……そうだけどさ、どしたの? 突然に」
怪訝な顔をして振り返ると、これです、と開いた本を見せてきた。
「誕生……花?」
辞典のような厚さのある冊子の真ん中よりもちょっと前寄りの辺りを押さえたまま、そっと私に手渡してくる。
「ちょっと用事があって調べていたんですけど」
開いたページにはアスタ-、ニオイスミレ、ラッパスイセン……と写真入りで載っていた。他のページも見てみると、桜やアネモネといった、じつに春めいた花が並んでいる。
「ふぅん、こういうのってあるんだねぇ」
誕生日にも花を割り当てたりとかするんだなぁ、面白い。
自分の誕生日に並んだ花は、ピンクだったり黄色かったり赤かったり、色とりどりだ。
見ているだけで心が跳ねる。
「ニオイスミレなんて、水原さんには正反対だなぁと思って」
言われて、紫の小花の下を見る。
花言葉は、謙虚、謙譲、貞淑、高尚……
「……誰が謙虚じゃないってのよ」
反目で睨むと「ああこれとか水原さんっぽいですね」と今度は水仙を指さした。
神秘、うぬぼれ、我欲、利己主義、自己愛、自尊心……だとぅ。
お前は私をなんだと思ってるんだよ……!
締め落としてやろうかと手を伸ばした時に、燈馬君がそうそう、と小さな鉢植えを出してきた。
産毛の生えた小さな手のひらのような葉っぱの、小さな花をつけたかわいらしい植物が白いプラスチックの鉢にちょこんと収まっている。
「これ、貰い物なんですけど……蚊連草って言うんです。ゼラニウムの一種なんですよ」
かれんそう。
……なんだそれ。
ぽかんとしていると、燈馬君は私にその鉢を押しつけてきた。
「所謂ハーブですね。植物自体が芳香を放っていて、その香り成分が虫除けになるそうですよ。蚊取り草とも呼ばれるそうです」
なるほど。受け取るとふんわりといい香りが漂ってくる。
こんな時期にも関わらず、葉っぱも青々としてしゃっきりしている。
室内だからっていうのもあるかもしれないけれど、それでも冬の始めだというのに花をつけるのはすごい。……春の花じゃないのかよ。
空調は効いていて暖かいにしても、日差しとかそういうのは全然違うはずなのになぁ。
首をかしげながら花を眺めていると。
「あげます。誕生花ですよね」
にこりと笑って手を差し出される。
くれるったって、蚊取り草だろ。虫よけなんてこんな時期に貰ってもなぁ。
心の声が聞こえたかのように、燈馬君はくすり、と笑う。
「なんだかすごく水原さんみたいで、僕は好きなんですよ、それ」
「それは、虫も寄らないってコト?」
それって女の子に送る賛辞としてどうなのさ、とちょっと憤る。
けれど燈馬君はふるふると首を振って、また笑う。
「いいえ、そうではなくて、性質とか、諸々、そういう点が」
性質。
植物と燈馬君を見比べる。
「ゼラニウムって強健なんですよ。枝を切って土に挿しておくだけでも根が出る。生命力に溢れて青々としてて。……いつも元気な水原さんみたいですよね」
生命力に溢れて、青々としている。
燈馬君から見て、私はそういう風に映っているのか。
……それは、まぁ。
わりと、嬉しいかも、なぁ。
「しぶといとか、そういう意味も若干入ってたりすんの?」
照れ隠しにそう一言訊いてみると、まさかそんなと含みのある笑い方をする。
あれ?もしかして図星なんだろうか。
「確かに、それだけじゃないですけどね」
そう言われて、またさっきの本を見る。
ゼラニウムの花言葉は。
尊敬と信頼、真実の愛情、決意、慰安、安楽、追憶、友情、君ありて幸福。
「僕は水原さんを『尊敬』してますし、『信頼』もしてますよ。一緒に居ると『楽しい』ですし『幸せ』です。……ね、水原さんみたいでしょう?」
言って本当に嬉しそうに笑う燈馬君を見せ付けられて……もう、どうしろっていうんだよ!
どう表情を作ればいいのかわからなくて、手の中の白い鉢を見る。
君ありて幸福。
ゼラニウムの花言葉。
──あぁ、そうだな。
燈馬君が『幸せ』でいることは、私も『幸せ』なんだから。
君が居てこその、幸せ。
「こいつ」と私はおんなじだ。
そっとその葉に触ってみたら、すっきりとした甘い匂いが、部屋いっぱいに広がった。
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