glossy lips
思いついた断片がなんとか形になったのでふぃぃ。
最近ツイッターが楽しすぎて更新遅くてすみません!!
一応それでもコミケ用の原稿とか文章とか絵とか書いてたりするんですううう。
頑張って文章まとめてまいりますっ!!!
ふと。痛々しい唇に目が行った。
白くかさついた口の端、ヒビ割れた隙間から鮮明な赤が見える。
気になるのか度々指で押さえてはいるけれど、それで治れば苦労はしない。
「それ、切れてる?」
「あ、はい。みたいです」
血の味がします、と触った指に付いた滲みをこすり落としながら、燈馬は何でもないことのように頷いた。
よっぽど気になるのか、ちろり、と傷口の上に舌が乗る。
ああダメだよ、と可奈は思わず声を上げた。
乾燥するからヒビ割れするわけで。
舐めてしまっては唾液の揮発と共に更に乾燥が進んで悲惨になってしまう。
油分を舐めとってしまうからだっけ? とか理由を考えるけれど、可奈の頭には唇の荒れの対処法だけしか記憶がない。
まぁでも大体そんなもんだろう。
原理に気がつけばこんなことはしないだろうけれど、生憎と目の前の朴念仁はそういった身なりに関する事柄を考えようという意識がない。
咄嗟に、ポケットに入れてあるリップクリームを手に取りぐりぐりと繰り出した。
長さにしてはほんの数ミリ。
開けたばかりでまだいくらも使ってないから十分にまだ残量がある。
この冬の新製品で、高い保湿効果と香りに煽り文句がついていたもので、付け心地は軽くてするする伸びるし果実の香りはしっかり感じるしで、可奈はわりかし気に入っていた。
「こういうのは保湿が一番のクスリなんだからさ、舐めたり皮を噛んだり切ったりしちゃ逆効果なんだよ」
友達の誰だかからの又聞きの又聞きの受け売りを自信ありげに呟きながら、可奈は燈馬の顎を左手で持ち上げた。
必然的に唇を差し出す格好になり、燈馬は大きく目を見開いた。
あまりにも唐突だったものだから無防備以外の何物でもない。いや構えていたとしたって可奈の所作から逃げ果せたためしなんてないけれど。
可奈の顔とは至近距離だ。吐息が暖かいまま、頬をかすめて行く。
こういう時にはどんな表情をすればいいのやら。
今までの経験をあらってみるけれど該当する項目もなく、仕方無しにまた痛々しそうに自分の唇を見る少女に目をやるけれど、その艶やかに血色のよい唇についつい目線が吸い寄せられ、どきん、と胸が大きく爆ぜた。
色付きじゃないフツーのやつだから大丈夫!と手に持ったスティック型のクリームを遠慮なく唇に押し当てられると、ぬるりとした感触に思わず息が止まった。
顎を捕らえる細い指とリップクリームの滑るのと、両方共にこそばゆい。
かさついて厚ぼったくなった唇でこんなにも鋭敏に感じるならば、はたして普段の薄い皮膚ならばどうなってしまうのか。自然と頬が熱くなる。
しかし心配そうに傷の具合を見る可奈に対してそういうことを考えるのは誠実さに欠けるかとやや罪悪感を感じ、目を閉じる。
もうどうとでもなれ、どうせ可奈なら悪いようにはしないだろうと捨て鉢気味に顔面を放棄すると、可奈はそんな意にも介さずちょいちょいと唇をなぞっていった。
ふわりと甘い、果物の香り。苺やらラズベリーやら、そういうたぐいのお菓子のような。
その香りの発生源は、自分の唇か目の前の可奈か。
「厚めに塗っておいたけど、舐めとったりしたら意味ないからそのままにしとけよ。昼時までにはいくらかマシになるとは思うけど、食べたらまた塗ってやるから」
そう言い肩をぽんと叩かれ目を開く。
可奈は満足げににこにこ笑っている。
切れた端にそっと指を這わすと油膜が厚めに重ねられている。先程感じた香りはそこかららしく、なんだか飴を食べているようだな、と燈馬は感じた。
──あれ?
もしかして水原さんも今、同じものを塗っているんだろうか?。
先程目に入った唇を思い出す。
吐息はわずかに甘い香りをはらんでいた気がする。それなら今、唇から漂うこの香りは、同じもの?
「どうかした?」
顔を赤くしたまま急に固まった燈馬に、可奈は不思議そうに首を傾げる。可奈は気づいてないのか気にしてないのやら。
しかし可奈には言えやしない。
唇を重ねたわけではないのに同じ香りを感じているなんて、まるでキスをしたみたいだなぁと思っただなんて。
「何でもないです」
控えめに笑いながら燈馬がそう言うと、じゃあ早く教室入ろ寒い寒いと、可奈は彼の背を押した。
・
・
・
「あ」
塗ろうとした瞬間、燈馬が声を上げた。
「何?」
「いや、何でも。」
なんだか含みのある言い方だよなぁと思いつつ、適度に出した固形物をくるりと唇に滑らせた。
ほんのりと香るベリーの香り。んー、この甘さが堪らない、と気持ちがほっこり上昇する。デザートを食べなくても食べた気分になれる。なんてお手軽で優秀なんだー、と感動しつつふと隣を見る。
今朝見て非常に痛そうだった口の端は、幾分か腫れは収まっているように見えた。
よしよし、今朝言った舐めたりいじったりするなという命令は聞いているなとホッとする。
食事も終わって今咥えているのは紙パックから伸びるストローだ。飲み終わったらちょっと塗ってやるかと手の中のリップクリームを持ち直す。
持ち直して、自分の唇を触る。
もう一度、リップクリームを見る。
……これは私のリップで。買ったばっかりだけどお気に入りで普段使いしてる逸品で。塗ると唇がつやつやふっくらするから乾燥にはよく効いてくれるもので。
で、今朝燈馬君の唇荒れてたから、これならマシになるかなぁと思ったから塗ってあげて。
「ああああああああああ!」
可奈が大きな声をあげて踞る。
そこまで考えて、先ほどの燈馬の声を上げた理由を知る。
これってさ!
これって、間接キスじゃん!!
燈馬に塗った時点でもう、可奈は何度か使っていたものだ。
そして今、燈馬に塗ったそれを、可奈は唇に乗せている。
そっと視線を燈馬に向けると、ですよね、と言わんばかりの表情で、彼はジュースの残りをずずず、と吸い上げていた。
「さ、昼休みも終わりますし。教室に帰りましょう」
にこり、と笑いながら燈馬が可奈に手を差し伸べる。
「……唇、大丈夫?」
「お陰様で。もう大丈夫です」
そう言う口の端は、確かに朝よりは白浮きしている箇所は少ないようだった。
けれど、荒れているのは変わらない。
可奈は差し出された手を引くと、また朝のように燈馬の頭を捕えた。
驚いた顔のままの燈馬の唇を指でなぞりため息をひとつ。
「とりあえず、治そ。……色々考えんの後でいいや」
真っ赤になりながらもホラ唇出しなと促す可奈に、燈馬は胸のくすぐったさを感じながら、また目を閉じて顔を差し出した。
最近ツイッターが楽しすぎて更新遅くてすみません!!
一応それでもコミケ用の原稿とか文章とか絵とか書いてたりするんですううう。
頑張って文章まとめてまいりますっ!!!
ふと。痛々しい唇に目が行った。
白くかさついた口の端、ヒビ割れた隙間から鮮明な赤が見える。
気になるのか度々指で押さえてはいるけれど、それで治れば苦労はしない。
「それ、切れてる?」
「あ、はい。みたいです」
血の味がします、と触った指に付いた滲みをこすり落としながら、燈馬は何でもないことのように頷いた。
よっぽど気になるのか、ちろり、と傷口の上に舌が乗る。
ああダメだよ、と可奈は思わず声を上げた。
乾燥するからヒビ割れするわけで。
舐めてしまっては唾液の揮発と共に更に乾燥が進んで悲惨になってしまう。
油分を舐めとってしまうからだっけ? とか理由を考えるけれど、可奈の頭には唇の荒れの対処法だけしか記憶がない。
まぁでも大体そんなもんだろう。
原理に気がつけばこんなことはしないだろうけれど、生憎と目の前の朴念仁はそういった身なりに関する事柄を考えようという意識がない。
咄嗟に、ポケットに入れてあるリップクリームを手に取りぐりぐりと繰り出した。
長さにしてはほんの数ミリ。
開けたばかりでまだいくらも使ってないから十分にまだ残量がある。
この冬の新製品で、高い保湿効果と香りに煽り文句がついていたもので、付け心地は軽くてするする伸びるし果実の香りはしっかり感じるしで、可奈はわりかし気に入っていた。
「こういうのは保湿が一番のクスリなんだからさ、舐めたり皮を噛んだり切ったりしちゃ逆効果なんだよ」
友達の誰だかからの又聞きの又聞きの受け売りを自信ありげに呟きながら、可奈は燈馬の顎を左手で持ち上げた。
必然的に唇を差し出す格好になり、燈馬は大きく目を見開いた。
あまりにも唐突だったものだから無防備以外の何物でもない。いや構えていたとしたって可奈の所作から逃げ果せたためしなんてないけれど。
可奈の顔とは至近距離だ。吐息が暖かいまま、頬をかすめて行く。
こういう時にはどんな表情をすればいいのやら。
今までの経験をあらってみるけれど該当する項目もなく、仕方無しにまた痛々しそうに自分の唇を見る少女に目をやるけれど、その艶やかに血色のよい唇についつい目線が吸い寄せられ、どきん、と胸が大きく爆ぜた。
色付きじゃないフツーのやつだから大丈夫!と手に持ったスティック型のクリームを遠慮なく唇に押し当てられると、ぬるりとした感触に思わず息が止まった。
顎を捕らえる細い指とリップクリームの滑るのと、両方共にこそばゆい。
かさついて厚ぼったくなった唇でこんなにも鋭敏に感じるならば、はたして普段の薄い皮膚ならばどうなってしまうのか。自然と頬が熱くなる。
しかし心配そうに傷の具合を見る可奈に対してそういうことを考えるのは誠実さに欠けるかとやや罪悪感を感じ、目を閉じる。
もうどうとでもなれ、どうせ可奈なら悪いようにはしないだろうと捨て鉢気味に顔面を放棄すると、可奈はそんな意にも介さずちょいちょいと唇をなぞっていった。
ふわりと甘い、果物の香り。苺やらラズベリーやら、そういうたぐいのお菓子のような。
その香りの発生源は、自分の唇か目の前の可奈か。
「厚めに塗っておいたけど、舐めとったりしたら意味ないからそのままにしとけよ。昼時までにはいくらかマシになるとは思うけど、食べたらまた塗ってやるから」
そう言い肩をぽんと叩かれ目を開く。
可奈は満足げににこにこ笑っている。
切れた端にそっと指を這わすと油膜が厚めに重ねられている。先程感じた香りはそこかららしく、なんだか飴を食べているようだな、と燈馬は感じた。
──あれ?
もしかして水原さんも今、同じものを塗っているんだろうか?。
先程目に入った唇を思い出す。
吐息はわずかに甘い香りをはらんでいた気がする。それなら今、唇から漂うこの香りは、同じもの?
「どうかした?」
顔を赤くしたまま急に固まった燈馬に、可奈は不思議そうに首を傾げる。可奈は気づいてないのか気にしてないのやら。
しかし可奈には言えやしない。
唇を重ねたわけではないのに同じ香りを感じているなんて、まるでキスをしたみたいだなぁと思っただなんて。
「何でもないです」
控えめに笑いながら燈馬がそう言うと、じゃあ早く教室入ろ寒い寒いと、可奈は彼の背を押した。
・
・
・
「あ」
塗ろうとした瞬間、燈馬が声を上げた。
「何?」
「いや、何でも。」
なんだか含みのある言い方だよなぁと思いつつ、適度に出した固形物をくるりと唇に滑らせた。
ほんのりと香るベリーの香り。んー、この甘さが堪らない、と気持ちがほっこり上昇する。デザートを食べなくても食べた気分になれる。なんてお手軽で優秀なんだー、と感動しつつふと隣を見る。
今朝見て非常に痛そうだった口の端は、幾分か腫れは収まっているように見えた。
よしよし、今朝言った舐めたりいじったりするなという命令は聞いているなとホッとする。
食事も終わって今咥えているのは紙パックから伸びるストローだ。飲み終わったらちょっと塗ってやるかと手の中のリップクリームを持ち直す。
持ち直して、自分の唇を触る。
もう一度、リップクリームを見る。
……これは私のリップで。買ったばっかりだけどお気に入りで普段使いしてる逸品で。塗ると唇がつやつやふっくらするから乾燥にはよく効いてくれるもので。
で、今朝燈馬君の唇荒れてたから、これならマシになるかなぁと思ったから塗ってあげて。
「ああああああああああ!」
可奈が大きな声をあげて踞る。
そこまで考えて、先ほどの燈馬の声を上げた理由を知る。
これってさ!
これって、間接キスじゃん!!
燈馬に塗った時点でもう、可奈は何度か使っていたものだ。
そして今、燈馬に塗ったそれを、可奈は唇に乗せている。
そっと視線を燈馬に向けると、ですよね、と言わんばかりの表情で、彼はジュースの残りをずずず、と吸い上げていた。
「さ、昼休みも終わりますし。教室に帰りましょう」
にこり、と笑いながら燈馬が可奈に手を差し伸べる。
「……唇、大丈夫?」
「お陰様で。もう大丈夫です」
そう言う口の端は、確かに朝よりは白浮きしている箇所は少ないようだった。
けれど、荒れているのは変わらない。
可奈は差し出された手を引くと、また朝のように燈馬の頭を捕えた。
驚いた顔のままの燈馬の唇を指でなぞりため息をひとつ。
「とりあえず、治そ。……色々考えんの後でいいや」
真っ赤になりながらもホラ唇出しなと促す可奈に、燈馬は胸のくすぐったさを感じながら、また目を閉じて顔を差し出した。
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