あかねいろ。

ホットケーキ作ろう。
牛乳気持ち多め。
卵一個。
隠し味に溶かしバター少々。
フライパンは一度冷まして。
生地はお玉で高い位置から。




ピンポン、とチャイムが鳴り。
覗くのは買い物袋といつもの笑顔。
おはよう、と声を聞き、寝ていた頭が瞬時に冴える。
今日は随分早いですね。
何か急ぎの用事でも？
急ぎって言えば急ぎかな。
まだわたし朝ごはん食べてないし。
どうしたんですかそんなに急いで？
いやいや実はね。
父さんが朝は米じゃなきゃ食った気がしないってんで、
毎朝うちはご飯党。
ご飯で朝食いいじゃないですか。
日曜日くらい、たまには変わりものが食べたいわけよ。
どうせ今起きたんでしょ？
朝ごはん付き合ってよ。


ホットケーキ作ろう。
牛乳気持ち多め。
卵一個。
隠し味に溶かしバター少々。
フライパンは一度冷まして。
生地はお玉で高い位置から。
綺麗にまぁるく円になる。
ふつふつ穴が空いたらくるり。
ちょこっと焼いて出来上がり。


へぇ、上手いもんですね。
結構色々研究したのよ。
燈馬君はお皿の準備ね。
お湯を沸かして、コーヒー作って。


バターとメイプルシロップかけても、
オムレツベーコンレタスをそえても、
どちらもお好きに。
お望みのままに。
ふんわりホットケーキ出来上がり。
出来た皿は、次々手渡し。
最後の皿は、自分用。


目配せをして手を合わす。
いただきます、と声を出し。
向かって座って食べるのを待つ。




にっこり笑った。
お日様のように。
美味しいです、と呟いて。
だろ？と返すのは狡いかな？
あんまりにも綺麗に笑うから。
朝から、正直、身が持たない。




まんまる、まぁるい皿の中。
まんまる、まぁるい、ホットケーキ。
食べたいよ、なんて言い訳で。
ただただ朝から逢いたかった。
朝のほんの一時間さえ。
共有したいし、欲しかった。


今日は何する？
どこ行こう？
そんな話題を振りながら。
まんまるケーキはひとかけふたかけ。
時計のようにちくたくちくりと。
角度を変えて消えていく。


あまーい、甘い、ホットケーキ。
最後に小さく、なくなった。
ほんのり甘く、後味残して。