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遠雷(想可奈)途中まで。

以前に話していたブツです。まだ完成してません。
しかも、完成させないまま、しばし実家に帰りますので更新がありません(爆)

ここからリンクは貼れないので、文章中を探してください。
続きが読めます。


※本サイトにUPしましたので、こちらのヒントは消します。
本サイトにて入口を探してください。



あと、全然関係ないんですが。

「化学変化とその構造式」をコピー本化することにしました。
完全にシュミです。すいません。
書き下ろし短編SSと漫画3P込60ページとかえーって感じですが。
興味のある方(いるのか?)拍手コメにでも問い合わせくださいませませ。
こちらも表紙絵まだなんで帰ってきてからの製本作業になりますががが。


では、以下、さしさわりのないところまで。









 白くけぶる豪雨の中、這う這うの体でなんとか想のマンションまでたどり着く。
 「大変な目に遭いましたね」 
 「ホントに。バケツをひっくり返したような雨ってやつよね」
 滴の落ちる前髪をかき分けながら、可奈はなんとか息をつく。服が体中に貼りついて気持ち悪い。

 本当に、間が悪い。
 二人で出かけようと外に出て、ものの十数分もしないうちに降り出した雨。
 すぐ止むだろうと雨宿りした軒下であれよあれよという間に本降りになり、あっと言う間に量を増す。待てども待てども止む気配もなく、仕方なしに今来た道を急ぎ引き返すことにした。
 降り始めたときにすぐ走って戻ればよかった。後悔しても、もう遅い。

 玄関の土間に、大きな水たまりが二つ。
 ずぶ濡れで悲惨な状態の人間二人。
 急ぎタオルを持ってきて拭くが、身に纏ったものに何一つ乾いているものがない状態のため、焼け石に水だ。
 肌にペタリと貼りつく布地は、ひんやりとした室内の空気も手伝ってじわりじわりと体の熱を奪ってゆく。

 必死に水気を拭う後姿が何気なく目に入り、想はぎょっとする。
 薄手のシャツに、下着が透けて見えている。
 可奈は全く気づいていない様子でタオルと格闘している。急ぎ目を逸らすが動悸は収まらない。

 「……僕の服、貸しますからシャワー浴びてください」
 自分の分のタオルを肩からばさっとかけ、バスルームに押し込める。
 体が冷えきってしまうから、なんて建前で。
 目のやり場に困るこの状況を何とか打開したかっただけだ。


 持っている衣類の中で、無難な服を選び、ドアの前に置く。
 可奈にドア越しに声をかけると、水音といつもの明るい声で返事が返ってくる。
 ただ、これだけのことなのに、体の芯が熱くなってくるのを感じる。
 やっと落ち着いてきたと思った鼓動も、また早まってくる。
 
 ああ、もう、こんな時に。
 いつもだったら、こんな思考にならないのに。
 
 思わず頭を抱えてしまう。
 無理矢理にでも切り替えないと。
 さもなければ。

 
 ひやりとする自らの腕に触れる。
 そういえば、自分はまだ濡れ鼠のままだった。
 可奈が出てくるまでに着替えてしまおう。
 切り替えるためには、違うことに意識を向ければいい。
 そうすればきっと、この馬鹿げた熱も冷めるだろう。
 

◆ ◆ ◆ ◆


 熱いシャワーを浴びると、思った以上に体が冷え切っていることに気がついた。
 さっきまであんなに暑いと思っていたのに。
 温まるようにじっくりと四肢に湯をかける。

 濡れてしまった洋服は、洗濯乾燥機を借りて乾かすとして。
 想に服を貸してもらえるのは、正直助かった。どんな服でもこの際文句は言えない。
 普段着の様子から、可奈が着てもそこまでおかしい物はないだろう。

 浴室から上がり、さっぱりしたところで、脱衣場の外に置かれている衣類を手探りで探す。
 Tシャツとハーフパンツが置かれている。
 まぁ、男物で着られるものといったら妥当だろう。
 多少は大きいものの、サイズとしてはそう変わらない。
 ウエストは紐で調節できるし。よかったー、と手に取った衣類を抱きながらはたと気づく。

 ……下着は?

 暖まったはずの背筋が一気に凍り付く。
 雨のせいで、身につけていたものは全滅だった。
 そう、ブラもショーツも全部。
 だからといって想に下着を借りれないし、いくらなんでも、下着なしで想の部屋をうろちょろするのは、いかがなものか。
 でも、流石にここまで水浸し状態のものを身につけて体を冷やしたら、せっかく暖まったのに本末転倒だ。
 なにより、気持ちが悪い。


 あーあ……
 折角の勝負下着だったのにな。
 先日、紀子達と買い物に行ったときのことを思い返す。

 何があってもいいように、出かけるときはなるべく勝負下着とか話してて、そーゆーもんなのかな、と深く考えずに一緒に購入した、レースとリボンのついた淡い色合いの、可愛い目の一揃い。
 下着に関しては全くこだわりがなかったため、飾り気のある唯一の下着がさっきまで身につけていたそれだった。
 当然、何があっても、というのは、そういうことを指す。
 わかっちゃいるけど、私には縁遠そうだよなぁ。
 そう思いつつも、想と会う時にはいつも身につけてはいた。一種のお守りのようなものだった。


 一つ、盛大なため息をつくと、覚悟を決めて素肌にTシャツを羽織り、ハーフパンツを穿く。
 ハーフパンツは浅めに、布に触れないように。
 大丈夫、バレなきゃ平気だろ。……多分。
 乾いたら速攻で着れば問題ないし。
 鏡で何度と無くチェックをする。
 幸い、どちらも色は濃いめで生地は厚い。
 意識して、見せないように。
 何度も心の中でつぶやきながら、バスルームを後にする。




 リビングで待ってた想は一応は乾いた衣類を身に纏っていたが、冷えきった体でテレビを眺めていた。
 「服、助かったよ。ありがと」
 頭からすっぽり被ったバスタオルで肩から下を隠す。
 見られても、そこまで不自然じゃないかな、と用意してきたが、想はそのままこちらも碌に見ずによかったです、と返事をする。
 「シャワー、浴びてきたら?」
 「いえ、僕はすぐ着替えましたから」
 全くこちらを見ようとしないまま、言葉を紡ぐ想にムっとする。
 さっきシャワーを浴びたときに、体の冷えを自覚している。それは自分だけでなく、想も同じだろう。こんなことで風邪を引いてしまうなんて馬鹿馬鹿しい。
 そっと近寄り、手を取る。想はびっくりしているが関係ない。
 案の定、かなり冷たい。
 「しのごの言ってないで、行ってこい」
 いや、でも、ともごもご言うのを無視し、今度は可奈が想をバスルームに押し込める。
 そもそもの持ち主が、体を温めなくてどうする!

 仄かに石鹸の香りが残る脱衣場に押し込められ、想は途方に暮れる。
 
 ……もう、どうしろっていうんですか!
 
 なんとか、なんとか、この芽生えてしまった劣情を落ち着けようと努力しているのに。
 可奈の気配の残るバスルームは、危険地帯だ。
 立ち入ったらどうなるかも想像つかない。

 そんな苦心も、可奈は知らないだろう。知らせる気など毛頭ないが、無邪気は、罪だ。
 へたりとその場に腰を下ろす。 
 この場を、どう乗り切るべきか。
 考えども考えども答えは出ない。
 出ないが。

 そのまま出たら水原さんに半殺しにされそうだな。
 そう思い至り。
 なんとか、浴室へ足を踏み入れた。


◇ ◇ ◇ ◇




続き↓
(枸櫞の英語表記).x.fc2.com
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