あかねいろ。

可奈ちゃんはエロカワイイサンプル→

燈馬君は料理ができない
月真分サンプル→

「食育は生きる上での基本であって知育徳育体育の基礎となるものである」


　燈馬君は料理が下手なワケではないと思うんだ。
　フライパン炎上事件だって一年の家庭科の授業以来起こしてないし（周りが気を遣ってるから係にならないだけだけど）この前急に思いついてパイ焼いてたりしたし（と言っても冷凍パイシート伸ばしてオーブンもほぼワンタッチだから難しくないっちゃあない）。やろうと思えば多分手の込んだ料理だって出来ると思うんだ。想像もつかないんだけど。ホラ、お菓子作りとかって科学だって言うじゃん？　だから毎回毎回、私がこうやって料理を作ってあげることはないんじゃないかって思うんだよね。

　というのを、燈馬君に言ってみた。
　彼はぱちくりと瞬きを何度かしてから「そう思いますか？」と首を傾げた。
「うん。経験値が少ないだけでさ、やりゃあ出来ると思うんだよね。折角立派なキッチンあるんだから使わない手はないって」
　多分こだわったワケでは無いんだろうけど、燈馬君ちには自炊するには十分な設備が揃っていた。建物自体はアンティークっぽいからどうなんだろうそういうのとは思ったんだけど、そこはそれ。リフォームかなんかしてから売り出したんじゃないかな、うん。それなりに羨ましく感じるくらいには揃ってる。
　私が料理を作らないときは大抵においてバランス栄養食系のパサパサしてるヤツとか、何秒かでチャージ出来るとかそういうゼリーみたいなのを食べてるっぽいのはゴミ箱を見てれば解る。
　カップラーメンとかよりかはいいんだろうけど、もっとこう、サプリメント的な物じゃなくてきちんとした栄養分を摂って欲しい、というのは私のワガママなんだろうか。
「確かに、自分では下手だとは思ってませんよ。料理に対して興味が湧かないから作っていないだけなので」
「興味ないの？」
「あまり。必要な栄養分が摂れればいいかな、と。それに、美味しい物を食べたいときは水原さんが作ってくれますし」
　……他力本願かよ。
　思わず小声で気持ちが漏れる。
　確かに私が食わせてやるのが一番手っ取り早いのは解ってるんだけどさ、毎日毎日通って食事作ってもいられないし、正直そこまでしたらもう通い妻じゃん？　私と燈馬君って付き合ってないよね？　そういう関係じゃないよね？　なんで私がそこまでしてやらなきゃなんないの？　ぐるぐるぐるぐる考えてるのもバカらしい。なんで私が燈馬君の為にこんなに考えなきゃいけないのよ、と若干イライラしつつ。
「自分で作れたら楽しいと思うんだけどなっ」
　となるべく明るい口調で提案してみる。
　ちくしょー後で覚えてろよ。
「そうですか？」
「そうなの！　こういうのを食育って言うんだからな。ちっとは食べ物に感謝しろ」
「そうですね……」
　イマイチ乗り気でない調子で、燈馬君は俯いた。
　コレは無理矢理にでもやらせないとやる気が起きないんじゃなかろうか……