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call my name

先日、可奈ちゃんが「そう?」と相槌を打つ度に狼狽する燈馬君とかどーよどーよ!とか一人シチュエーション妄想しておりましたので、それを糧に料理してみました……

 いつものように絵描いてるときと文章書いてるときの切り替えの狭間の文章なんで、まただしだし手直し入るかもですが……!


 名前の呼び方関連の妄想は可奈ちゃんサイドのネタでもう一つあるので、それも書きたい……!






 日本に来るまでは、「燈馬君」なんて呼ばれ方はしなかった。文化の違いもあるし、年齢的なものもあるだろう。
 ロキが僕の事を「トーマ」と呼んで以来、数人の友人と言える人間からは燈馬と呼ばれていたし、公的な場所で論文を発表するときもファミリーネームを使われていたけれど。やはり、日本に来てからの「燈馬君」は最初は耳慣れなかった。
 今では当然のように、周りの人間は僕の事を「燈馬君」と呼び、「想」と呼ばれるのは稀になった。
だから、それは本当に不意打ちを食らったような感覚だった。


 「そう?」
 水原さんが、小首を傾げて僕の顔を覗き込んだ。

 「はい?」
 ひっくり返ったような、なんとも情けない声で、僕は返事をした。



 ……水原さんが、僕を、ファーストネームで呼んだ?!

 日本ではそれはどんなに親しい間柄でも一般的ではなくて、まだ愛称とかの方が馴染みがいい。
 僕の場合は、もう「トーマ」と呼ばれる事が愛称のようで、それを僕もよしとしていて。
 水原さんが呼んでくれる「燈馬君」という、音が好きで。
 でも、こんなに自分で狼狽えているということは、心の何処かで名前で呼んでほしいと願っていたということなんだろうか?
 それは、まるで……
 グルグルと高速で回転する僕の頭の中なんて気付かずに、水原さんが、再度、僕の目を見て言う。

 「“燈馬君”、本当に“そう”思う?」


 ……あぁ、なんだ。
 相槌の“そう”だったのか。

 途端に勘違いした自分が恥ずかしくなって、耳まで熱くなるのが解る。
 水原さんが訝しげな顔をしているけれど、止めようもなくて、曖昧に笑みを浮かべるしか出来ない。
 「……えぇと、なんでカレーに大根入れるかどうかの話で赤くなんの? 何かいかがわしい想像でも、した?」
 先ほど、「そう?」と相槌を返される前までの、会話を思い出す。
 ああ、そういえば。
 確かそういう話をしていて。
 大根は根菜類だから入っていてもそこまで違和感はないんじゃないですか、と、パソコンから目も離さずに、自分は返事をしていたと思う。
 特に気にせず、いつも通りに。

 その流れは、取り立てて珍しいものではなかった。
 僕が答えて、水原さんが受け取る。
 水原さんが意見を言って、僕が受け取る。
 相槌の“音”なんて気づきもしなかった、今まで。


 いかがわしいといえば、いかがわしいのだろうか。
 水原さんの相槌が、僕の名前を呼んでくれているみたいで。
 それはまるで家族が呼んでいるみたいだな、と一瞬思ってしまったのは。

 想、と呼ばれるのは、父や、母や、優からが多く、やはり耳慣れている。
 だから“そう”という音は、どことなく、甘い感じがする。
 そう思うと、なんだか急に気恥ずかしくなってしまった。



 「……いいえ、なんでもありません」
 赤みの引かない顔をそのままに、ぎこちなく、笑う。
 「……“そう”?」
 納得しない顔で、また、水原さんは相槌を打った。
 また、僕の胸は制御できずに、どきん、と大きく疼いた。


 一度気づいてしまったら、これはもう一生気にしてしまうのだろう。
 こんな他愛もない会話の、水原さんが相槌を打つ度に何度も心臓を跳ねさせたら、いつか僕は死んでしまうのではないだろうか?

 これはもう、不治の病だ。治す術は、ひとつだけ。
 水原さんが、僕の名前を、「想」と、名前を呼んでくれること。
 それが、普通のことなのだと、認識すること。


 それには、どうしたらいいだろうか。




 「じゃあ、そんな訳で。燈馬君的にOKなら、今日晩御飯大根入りカレー作って帰るからさ」
 くるりと、水原さんが背を向ける。
 楽しげにキッチンに向う背に、僕は声を掛けてみる。
 「……水原さん」
 それは、小さな声で。
 「水原さんの事、“可奈”って呼んだら。僕のことを“想”って呼んでくれますか?」



 「んー?なんか言った?」
 ドアの向こうから、水原さんがひょこりと顔を覗かせる。
 「……何でもありません」

 「そう?」
 また、水原さんが、首を傾げた。


 意図して言っているわけではないのだろうけれど。
 あまりにもあざといくらいに、その、言う仕草が可愛らしくて。
 名前を呼ばれているように錯覚する僕は、惑わされている。
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