現在進行形
多分可奈ちゃん目線のが燈馬君が可愛く書けたんじゃないかなぁと思いつつ、たまには燈馬君目線で書いてみよう、と頑張ってみたところ、ちょっと微妙なカンジに。
もしかしたら可奈ちゃん目線であとでリベンジするかもっ(滝汗
『現在進行形』
「まさかあんなとこで会うとは思わなかったわー」
楽しそうに息を弾ませながら、水原さんはどっかりとソファに座る。
二人で帰宅している最中に、偶然水原さんの小学校の頃の友達と再会した。
久しぶりー、元気だったー? の定型から始まった会話は近況から始まって、同じクラスだった誰々は今はどうしてる、先生は相変わらず等、どんどん広がりなかなか止まらなかった。
その最中、僕はといえば何もすることがないので最初のうちは水原さんに促されて相づちを打っては居たけれど途中からはもう、いたたまれなかった。
「……水原さん、先に帰ってていいですか?」
「もうちょっと待って! あと少しだけ」
言う度にブレザーの裾を引かれ、溜め息をつきながらその場で待つ。
彼氏なの? 違うけど?
隣から聞こえる隠す気のない会話にため息を着く。
……違うならなんでおとなしく待たされないといけないんだろう。
水原さんの思い出話は確かに興味深い。けれど、延々と脈絡もなく単語が飛び交う今の状況ではとてもじゃないけれど聞いていられない。話の断片が頭に入ったかと思うとまた違う話。聞いてるだけでストレスが溜まる。
別の事を考えていればイライラしないだろうと思っても気になってしまうのだから仕方がない。
そのうち相手の方が時間に気付いて別れを告げてようやく帰路につけたのだけれど、水原さんは晴れ晴れとした表情、対して僕は不快な空気を纏って家に着いた。
一息ついた水原さんが、僕の様子に気付いて首を傾げる。
「どうしたの? 疲れた?」
「えぇ、疲れましたよ」
「ゴメンねぇ、あんまりにも懐かしかったからさぁ」
あまり謝っているようには見えない笑顔で、水原さんは拝むように手を合わせる。
それでも機嫌が治らないのを察知して、しばし考え、にやりと口角を上げた。
何を考えたのだろうか。いや、多分、考えていることは大体解る。
「えー? なになに? もしかして燈馬君、さっきの子に嫉妬してんのー?」
ニヤニヤと笑いながら水原さんは脇腹を小突いてくる。水原さんからしたらからかう事柄が増えて面白いのだろう。
当然ながら、僕は面白くない。
つまらない話を聞かされたからではなく。無意味に時間を潰されたからではなく。……僕の知らない水原さんを見せつけられているようだったから。
僕は溜息を吐きながら頭を振る。きっとこの気持ちは、言葉にしなければ水原さんに気付いては貰えない。
「そりゃあ、嫉妬くらいしますよ。小学生の頃の水原さんの事なんて、以前に聞いた話しか知りませんから」
水原さんの言葉を認める形で、不快であることを隠さないまま僕は答える。
はた、と水原さんの動きが止まった。よっぽと思いもよらない事だったらしく、表情もそのまま、引きつっているように見える。固まったまま十数秒、ようやく顔をこちらに向けて、水原さんはあはは、と渇いた笑いを浮かべた。
「……燈馬君でも嫉妬するんだ」
「僕を何だと思ってるんですか」
「ごめんごめん」
この軽い謝り方からすると、僕の不機嫌を嫉妬だと認識しても、他愛のない軽い物だと思っているのだろう。友だちの会話に入り込めなくて拗ねてる類の。水原さんは解ってない。
確かに、二人だけにしか解らない会話を延々と聞かされるのは苦痛だ。
だけど、不満に思っているのはそこではなくてもっと根底のことだ。そこはどうあがいたってもうどうしようもないし、どうしようもないからこそ、始末に負えない。自分で自分が情けないけれど、もう理屈じゃない。
むくれたまま何も言わない僕の様子に、さすがの水原さんも気まずくなったようだった。
ソファから立ち上がり、僕の目線に合わせるように、下から上目遣いでこちらを覗く。
「……仲間外れにしたつもりはないんだよ? たまたま、話が長引いちゃっただけで。……ごめんね」
しょんぼりする水原さんを見て、ほんの少し溜飲を下げる。でも水原さんに当たるのは筋違いだ。それが解るから、僕もすみません、と頭を下げた。大人げなかったかな、と自分でも思う。
「僕の過去だって、水原さんは知りようがないんですから同じですよね。どんなに調べたって教えてもらったって、その時々の感動や経験は共有できない。……僕の知らない水原さんを相手が知ってて、それに嫉妬したところで無意味なのは解ってるんです」
ここまで僕が言ってやっと、嫉妬の指すところが何なのか水原さんに伝わったようで徐々に顔が赤くなっていく。あんなことを言ってても、そういう意味での意識は、もともとしてくれているのかもしれない。
「……解る気がする」
赤いまま、水原さんが答えた。
「ロキからMIT時代の燈馬君の話を聞いたりすると、羨ましいって思うもん。多分、それと同じことだよね」
「そうですね」
嫉妬ではなく、羨ましい。意外と僕は子供っぽいのかもしれない。それとも性別の差か、もっと別のことか。いずれにしても、僕も水原さんも、同じように不毛な思いをするという経験をしたという事だ。
「もう、仕方ないことは置いといてさ」
唐突に、水原さんは顔を上げた。
「高校入ってからの燈馬君のことは、私よく知ってるし! ロキを羨ましいがらせるくらいなら出来るしさ! だから……きっとそういうもんなんだよ!」
うんっ、と大きく頷く仕草に、僕は思わず声を上げて笑ってしまった。
言わんとしていることは解る。一緒に過ごした時間はそれぞれで違うし個人差が大きい。密度の濃さだって違うだろう。だから個々の記憶に対して何かしら思うというのは違うのだ。自分自身で大事なものがあればそれでいいのだと。
でも、そこまで解ってて、僕は案外欲張りなんだなと自覚する。
今まで積み上げてきた記憶も体験も何もかもが大切だけど、それがもっと増えてくれればいいと思っている。この先も、ずっとずっと。
「これから先も水原さんと色々な経験を共有しあえたらいいな、と僕は思います。そしてそれを大事にしていけたら、嬉しいです」
正直に今の気持ちを素直に言ったら、水原さんは更に顔を真っ赤にしてその場に踞って頭を抱えた。
ぷるぷると肩が震えている。顔は見えないけれど照れているのだろうか?
後ろから見える耳も、湯気が出そうなくらい真っ赤に染まっていた。
「……それってどういう意味?」
問われたからには答えを出さないといけない。
僕はクスリと笑い水原さんの前に行くと、視線を合わせるようにしゃがんだ。
今の僕の言葉で水原さんはどう思ったんだろうか? もっと僕に対して、意識をしてくれたんだろうか。
嫉妬の気持ちもなにもかもが、彼女を起点に起きている。もう答えは明確だけれど、やはり拒絶されるのは怖い。
だから真っ直ぐに言うのが少し怖くて、結局、いつものような言い草だ。
「水原さんの考えてる通りです」
さて、水原さんはなんて答えるだろうか?
また「狡い」と拗ねてしまうだろうか?
僕はどきどきしながら、水原さんの言葉を待った。
もしかしたら可奈ちゃん目線であとでリベンジするかもっ(滝汗
『現在進行形』
「まさかあんなとこで会うとは思わなかったわー」
楽しそうに息を弾ませながら、水原さんはどっかりとソファに座る。
二人で帰宅している最中に、偶然水原さんの小学校の頃の友達と再会した。
久しぶりー、元気だったー? の定型から始まった会話は近況から始まって、同じクラスだった誰々は今はどうしてる、先生は相変わらず等、どんどん広がりなかなか止まらなかった。
その最中、僕はといえば何もすることがないので最初のうちは水原さんに促されて相づちを打っては居たけれど途中からはもう、いたたまれなかった。
「……水原さん、先に帰ってていいですか?」
「もうちょっと待って! あと少しだけ」
言う度にブレザーの裾を引かれ、溜め息をつきながらその場で待つ。
彼氏なの? 違うけど?
隣から聞こえる隠す気のない会話にため息を着く。
……違うならなんでおとなしく待たされないといけないんだろう。
水原さんの思い出話は確かに興味深い。けれど、延々と脈絡もなく単語が飛び交う今の状況ではとてもじゃないけれど聞いていられない。話の断片が頭に入ったかと思うとまた違う話。聞いてるだけでストレスが溜まる。
別の事を考えていればイライラしないだろうと思っても気になってしまうのだから仕方がない。
そのうち相手の方が時間に気付いて別れを告げてようやく帰路につけたのだけれど、水原さんは晴れ晴れとした表情、対して僕は不快な空気を纏って家に着いた。
一息ついた水原さんが、僕の様子に気付いて首を傾げる。
「どうしたの? 疲れた?」
「えぇ、疲れましたよ」
「ゴメンねぇ、あんまりにも懐かしかったからさぁ」
あまり謝っているようには見えない笑顔で、水原さんは拝むように手を合わせる。
それでも機嫌が治らないのを察知して、しばし考え、にやりと口角を上げた。
何を考えたのだろうか。いや、多分、考えていることは大体解る。
「えー? なになに? もしかして燈馬君、さっきの子に嫉妬してんのー?」
ニヤニヤと笑いながら水原さんは脇腹を小突いてくる。水原さんからしたらからかう事柄が増えて面白いのだろう。
当然ながら、僕は面白くない。
つまらない話を聞かされたからではなく。無意味に時間を潰されたからではなく。……僕の知らない水原さんを見せつけられているようだったから。
僕は溜息を吐きながら頭を振る。きっとこの気持ちは、言葉にしなければ水原さんに気付いては貰えない。
「そりゃあ、嫉妬くらいしますよ。小学生の頃の水原さんの事なんて、以前に聞いた話しか知りませんから」
水原さんの言葉を認める形で、不快であることを隠さないまま僕は答える。
はた、と水原さんの動きが止まった。よっぽと思いもよらない事だったらしく、表情もそのまま、引きつっているように見える。固まったまま十数秒、ようやく顔をこちらに向けて、水原さんはあはは、と渇いた笑いを浮かべた。
「……燈馬君でも嫉妬するんだ」
「僕を何だと思ってるんですか」
「ごめんごめん」
この軽い謝り方からすると、僕の不機嫌を嫉妬だと認識しても、他愛のない軽い物だと思っているのだろう。友だちの会話に入り込めなくて拗ねてる類の。水原さんは解ってない。
確かに、二人だけにしか解らない会話を延々と聞かされるのは苦痛だ。
だけど、不満に思っているのはそこではなくてもっと根底のことだ。そこはどうあがいたってもうどうしようもないし、どうしようもないからこそ、始末に負えない。自分で自分が情けないけれど、もう理屈じゃない。
むくれたまま何も言わない僕の様子に、さすがの水原さんも気まずくなったようだった。
ソファから立ち上がり、僕の目線に合わせるように、下から上目遣いでこちらを覗く。
「……仲間外れにしたつもりはないんだよ? たまたま、話が長引いちゃっただけで。……ごめんね」
しょんぼりする水原さんを見て、ほんの少し溜飲を下げる。でも水原さんに当たるのは筋違いだ。それが解るから、僕もすみません、と頭を下げた。大人げなかったかな、と自分でも思う。
「僕の過去だって、水原さんは知りようがないんですから同じですよね。どんなに調べたって教えてもらったって、その時々の感動や経験は共有できない。……僕の知らない水原さんを相手が知ってて、それに嫉妬したところで無意味なのは解ってるんです」
ここまで僕が言ってやっと、嫉妬の指すところが何なのか水原さんに伝わったようで徐々に顔が赤くなっていく。あんなことを言ってても、そういう意味での意識は、もともとしてくれているのかもしれない。
「……解る気がする」
赤いまま、水原さんが答えた。
「ロキからMIT時代の燈馬君の話を聞いたりすると、羨ましいって思うもん。多分、それと同じことだよね」
「そうですね」
嫉妬ではなく、羨ましい。意外と僕は子供っぽいのかもしれない。それとも性別の差か、もっと別のことか。いずれにしても、僕も水原さんも、同じように不毛な思いをするという経験をしたという事だ。
「もう、仕方ないことは置いといてさ」
唐突に、水原さんは顔を上げた。
「高校入ってからの燈馬君のことは、私よく知ってるし! ロキを羨ましいがらせるくらいなら出来るしさ! だから……きっとそういうもんなんだよ!」
うんっ、と大きく頷く仕草に、僕は思わず声を上げて笑ってしまった。
言わんとしていることは解る。一緒に過ごした時間はそれぞれで違うし個人差が大きい。密度の濃さだって違うだろう。だから個々の記憶に対して何かしら思うというのは違うのだ。自分自身で大事なものがあればそれでいいのだと。
でも、そこまで解ってて、僕は案外欲張りなんだなと自覚する。
今まで積み上げてきた記憶も体験も何もかもが大切だけど、それがもっと増えてくれればいいと思っている。この先も、ずっとずっと。
「これから先も水原さんと色々な経験を共有しあえたらいいな、と僕は思います。そしてそれを大事にしていけたら、嬉しいです」
正直に今の気持ちを素直に言ったら、水原さんは更に顔を真っ赤にしてその場に踞って頭を抱えた。
ぷるぷると肩が震えている。顔は見えないけれど照れているのだろうか?
後ろから見える耳も、湯気が出そうなくらい真っ赤に染まっていた。
「……それってどういう意味?」
問われたからには答えを出さないといけない。
僕はクスリと笑い水原さんの前に行くと、視線を合わせるようにしゃがんだ。
今の僕の言葉で水原さんはどう思ったんだろうか? もっと僕に対して、意識をしてくれたんだろうか。
嫉妬の気持ちもなにもかもが、彼女を起点に起きている。もう答えは明確だけれど、やはり拒絶されるのは怖い。
だから真っ直ぐに言うのが少し怖くて、結局、いつものような言い草だ。
「水原さんの考えてる通りです」
さて、水原さんはなんて答えるだろうか?
また「狡い」と拗ねてしまうだろうか?
僕はどきどきしながら、水原さんの言葉を待った。
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