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大きな荷物が歩いて来たら(想可奈)

拍手を更新したので、いままで使ってた拍手SSをUPします。
 (と、言ってもpixivでもうUP自体はしちゃってるんですが:汗)











 「何やってんのさ」
 のそのそとこちらに歩いてくる段ボール箱に声をかける。
 「あ、水原さん」
 茶色い山が苦しげに揺れる。
 「地学準備室にこれ、持って行くところなんですけど……」
 「仕方ねぇなぁ」
 言うよりも早く、上のほうから何個かダンボールを外し、隣に組み上げて持った。
 先生も相手考えてから仕事まかせればいいのに。
 燈馬君一人じゃ、全部運びきれないのなんて目に見えているだろうに。
 可奈に三つ、想に二つ。
 段ボール箱の山が小さく分かれた。

 「……すみません」
 壁が無くなったため、申し訳なさそうな想の顔が見える。
 「じゃあ、今日の放課後なんか奢ってよ」
 「高価なものじゃなければ」
 「ケチー」
 てくてく廊下を歩きながら、そんな他愛もない話をする。



 男性として人並みには力もあると思うんだけどなぁ。
 可奈を対象として比較すると、どうもそれが霞んでしまうようだ。
 「水原さんは、」
 「何?」 
 「僕のこと、頼りなさそうに見えますか?」
 可奈は、想の方に顔だけ向ける。
 「どうして?」
 「箱、僕の方が少ないです」
 ああ、なんだそんなこと、と可奈は笑った。
 「前が見えなきゃ危ないじゃない。それにこっち三個でも軽いし」
 頼りないというよりも、もっと根本的なものか。
 ……情けない。
 思わず、ため息を漏らしてしまう。


 「頼りになるならないの判断にはならないでしょ、こんな荷物運びで」
 「まぁ、そうですよね……」
 男性としては、とっても気になってしまうところだけれども。
 「少なくとも、いつだって私は燈馬君のこと、頼りにしてるよ?」
 

 「本当ですか?」
 疑いつつも、想は尋ねる。
 「頭がいいとか力が強いとかそんなの一面でさ、困ったときにいつだって助けてくれる。これが一番頼りになるってことじゃないかな」
 頼りになる。
 その言葉を可奈から聞けただけで、さっきまでの鬱々とした気持ちが晴れていく。
 ああ、我ながら単純だな。
 想は思った。


 「そんなわけで、ご褒美は駅前のお店のチーズケーキ1ホールで。」
 「高価なのはダメって言ったじゃないですか」
 「えー、いいじゃん。今日の晩御飯のデザートにさ」
 今日は私が食事当番なんだ、一緒に食べようよ~。
 唇を尖らせて言う可奈を、想は苦笑しつつ見つめた。

 「じゃあ、今晩の夕食の出来、頼りにしてますからね。食事当番さん」






03. 大きな荷物が歩いて来たら
恋したくなるお題
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