見上げれば足元不用心 (想可奈)
前回のぶかぶかな上着とこの話は、一応「部品」だけは以前からあって、組み立てるだけだったんですが……
それが難しいっ!!
文章能力が切実に欲しい今日このごろです。
これにて身長差のお題5題終了です♪
またお題を探してきます……
「危ない!」
その声が届くのと同時に、脚立に乗せていたはずの左足が宙を掻いた。
体重を掛ける当てが外れた身体は、ぐらりと傾く。
……あー……メンドくさがって脚立テキトーに立てて使っちゃったからなぁ。
でもさ。
この本があんなたっかい場所に刺さってるのがそもそも悪いんだよ。
床に向かって落ちゆく中、そんなことを考えつつ、可奈は身体を反転させる。
背中から落ちるのは危ないと本能的に察したからだった。
自分の身体能力で考えればかすり傷ひとつ負わない自信があるが、一緒に落ちゆく物は先ほどまで自分が持っていたハードカバーの分厚い本が何冊か。
流石に落下物までは避けきれないかなと腹を括り、衝撃を覚悟し目を閉じる。
大きな音を立てて脚立が倒れ、身体が、本が床に散らばる。
幸いにも落下物は周囲に逸れたようで安堵する。
受身は取れなかったものの、思ったよりは落下のダメージは少ない。
手足や顔面は強かに打ちつけたようで若干クラクラするが。
怪我はどの程度だろう、確認しようと顔を動かすと、唇に何かが、当たった。
ん?
顔を上げると、目の前には、潤んだ暗い色の瞳があった。
自分の顔をその中に見つける。
ああ、自分も同じような惚けた顔してるな。
そうか、燈馬くんが、下敷きになってくれてるのか。
道理で。
思ったより痛くない。
像を結んだ瞳は可奈の視線を捕らえ、そのまま、絡めとっていった。
正気に戻るのに、実際の所は10秒もかからなかった。
「ばか、馬鹿バカ!」
可奈は想の身体から飛び退くとぼかぼかと拳を振り回す。
照れ隠しも入っているのかかなり力がこもっており、当たると痛い。
「ちっとは身体能力ってものを考えなさいよ!」
「自然と体が動いちゃったんだから仕方がないでしょ」
片手で受けながら避けてはいるが、それでも素早さに勝る可奈の攻撃は度々想を襲う。
痛みに思わずため息が出る。
……こういうときは気が済むまで付き合うほうが結果的に早く終わるんだよな。
経験上の最善策を、想は選ぶことにした。
「さっきの……怪我はなかった?」
たっぷり発散して気が紛れたのか、可奈は問う。
散々叩いといて何言ってるんですか、と想が返すと、面目ないと拝むように謝られた。
その仕草は、なんだか小動物じみて可愛らしい。
先ほどまで理不尽に殴られていたはずなのに、胸の中のもやもやが霧散してしまう。
「水原さんこそ、手首捻ったりとかしてないですか?」
「そこはホラ、持ち前の運動神経でへっちゃらよっ!」
可奈はひらひらと目の前で手首を振る。
幸いにして打撲もたいしたものではないらしく、手足に目立った外傷は見当たらなかった。
まぁ、打撲痕は後からひどくなるのだけれど。
後から痛くなったりもするので、気をつけてください、と想に言われると、可奈は素直に頷いた。
心配そうに自分の手を見つめる想を眺めながら、可奈は先ほどの、上体を起こすまでのことを考える。
あのとき、勘違いでなければ。
唇に触れた、ものは。
とくん。
心臓が、跳ねた。
「……さっきのはノーカンだからね」
思わず、ぼそっと声に出す。
きっと、燈馬君は気がついていないだろう。
当たったとき、まだ意識が戻ってなかったっぽいし。
「何かいいました?」
「ありがと、さっきはごめんねって言ったのっ」
動悸の早さとか顔の赤さとか。
そういったものが伝わるのを恐れて、ばっと手を振り払う。
どうかどうか、気がつくな。
気がつかないのもなんだかくやしいような。
気恥ずかしい、でも苦しい。
ごちゃ混ぜなこの感情を。
可奈は、そっと自分の唇に指を当ててみる。
そこにまだ熱が残っているか、確かめるように。
01. 見上げれば足元不用心
恋したくなるお題
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html
それが難しいっ!!
文章能力が切実に欲しい今日このごろです。
これにて身長差のお題5題終了です♪
またお題を探してきます……
「危ない!」
その声が届くのと同時に、脚立に乗せていたはずの左足が宙を掻いた。
体重を掛ける当てが外れた身体は、ぐらりと傾く。
……あー……メンドくさがって脚立テキトーに立てて使っちゃったからなぁ。
でもさ。
この本があんなたっかい場所に刺さってるのがそもそも悪いんだよ。
床に向かって落ちゆく中、そんなことを考えつつ、可奈は身体を反転させる。
背中から落ちるのは危ないと本能的に察したからだった。
自分の身体能力で考えればかすり傷ひとつ負わない自信があるが、一緒に落ちゆく物は先ほどまで自分が持っていたハードカバーの分厚い本が何冊か。
流石に落下物までは避けきれないかなと腹を括り、衝撃を覚悟し目を閉じる。
大きな音を立てて脚立が倒れ、身体が、本が床に散らばる。
幸いにも落下物は周囲に逸れたようで安堵する。
受身は取れなかったものの、思ったよりは落下のダメージは少ない。
手足や顔面は強かに打ちつけたようで若干クラクラするが。
怪我はどの程度だろう、確認しようと顔を動かすと、唇に何かが、当たった。
ん?
顔を上げると、目の前には、潤んだ暗い色の瞳があった。
自分の顔をその中に見つける。
ああ、自分も同じような惚けた顔してるな。
そうか、燈馬くんが、下敷きになってくれてるのか。
道理で。
思ったより痛くない。
像を結んだ瞳は可奈の視線を捕らえ、そのまま、絡めとっていった。
正気に戻るのに、実際の所は10秒もかからなかった。
「ばか、馬鹿バカ!」
可奈は想の身体から飛び退くとぼかぼかと拳を振り回す。
照れ隠しも入っているのかかなり力がこもっており、当たると痛い。
「ちっとは身体能力ってものを考えなさいよ!」
「自然と体が動いちゃったんだから仕方がないでしょ」
片手で受けながら避けてはいるが、それでも素早さに勝る可奈の攻撃は度々想を襲う。
痛みに思わずため息が出る。
……こういうときは気が済むまで付き合うほうが結果的に早く終わるんだよな。
経験上の最善策を、想は選ぶことにした。
「さっきの……怪我はなかった?」
たっぷり発散して気が紛れたのか、可奈は問う。
散々叩いといて何言ってるんですか、と想が返すと、面目ないと拝むように謝られた。
その仕草は、なんだか小動物じみて可愛らしい。
先ほどまで理不尽に殴られていたはずなのに、胸の中のもやもやが霧散してしまう。
「水原さんこそ、手首捻ったりとかしてないですか?」
「そこはホラ、持ち前の運動神経でへっちゃらよっ!」
可奈はひらひらと目の前で手首を振る。
幸いにして打撲もたいしたものではないらしく、手足に目立った外傷は見当たらなかった。
まぁ、打撲痕は後からひどくなるのだけれど。
後から痛くなったりもするので、気をつけてください、と想に言われると、可奈は素直に頷いた。
心配そうに自分の手を見つめる想を眺めながら、可奈は先ほどの、上体を起こすまでのことを考える。
あのとき、勘違いでなければ。
唇に触れた、ものは。
とくん。
心臓が、跳ねた。
「……さっきのはノーカンだからね」
思わず、ぼそっと声に出す。
きっと、燈馬君は気がついていないだろう。
当たったとき、まだ意識が戻ってなかったっぽいし。
「何かいいました?」
「ありがと、さっきはごめんねって言ったのっ」
動悸の早さとか顔の赤さとか。
そういったものが伝わるのを恐れて、ばっと手を振り払う。
どうかどうか、気がつくな。
気がつかないのもなんだかくやしいような。
気恥ずかしい、でも苦しい。
ごちゃ混ぜなこの感情を。
可奈は、そっと自分の唇に指を当ててみる。
そこにまだ熱が残っているか、確かめるように。
01. 見上げれば足元不用心
恋したくなるお題
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