縺れた糸の解き方(後)
大変長らくお待たせしました。
いやもう中で終わらせてもいいんじゃね?とかいう内容でもう締めるだけだというのに全然締めないままもう一年半。
無理矢理終わらせました!
いや印刷媒介にしようかなぁと年末にちょっといろいろ頑張って進めたんですがもう中の時点で30頁でしかも蛇足が纏まらなくて……orz
いっそ、ご挨拶編カットしてしまえ!と思いまして切りました。
蛇足も綺麗に纏まりそうであればどこかで出すかもしれません……
これだけ引っ張っといてこのていたらくですが、とりあえず、完結ということにさせてくださいm(__)m
「まさか仲直り通り越して結婚するとは思わなかった」
香坂が呆れた様子でため息をついた。
「いつも思うけどさ。あんたたち、一足飛びよね」
「……そう思う」
思い切りがいいのは悪いことじゃないけどさ、と呟くその横顔は、ほんのり嬉しそうだ。
見慣れない盛装姿の、アップにしたその髪が、ゆっくりと頷くように縦に揺れる。
「……うん、良かった」
何が良かったのか。
それは言われなくても解ってる。
一番心配してくれていたのは香坂だ。
一番自責の念に駆られていたのは、香坂だ。
「絶対あんたたち幸せになれるよ。保証する」 だから、ブーケは私によこしなさいよ! と香坂が肘で小突いて照れ隠しをするその最中、コンコン、と渇いた音がドアから響いた。
「準備できましたか?」
燈馬君の声が、聞こえる。
「仕方ないなぁ。名残惜しいけどここは旦那様にお任せしますか」
香坂は芝居がかった言い回しでそう言うと、軽く手を振りドアを開ける。
その目の前に燈馬君がいたらしく、似合うじゃん! とか言いながら招き入れて。自分はさっさと外に出て行った。
──名残惜しいのは私も一緒だっての。
あと数日で別れる親友の後ろ姿を、微笑みながら見送るその場所から、今度は燈馬君が入ってきた。
一息分、燈馬君が固まる。
私も同じく、その瞬間、息が止まる。
お互いの着飾った姿を見るのは初めてではないけれど、やっぱり、この瞬間は特別なんだと思う。
まるで儀式のように。
きっと、お互いに、お互いの姿に見とれて、また恋に落ちている。
「……綺麗です」
吐息に混ぜるように、恥ずかしそうに、燈馬君は頬を赤らめた。
そのくせ、真っ直ぐこっちを見たままだから始末におけない。こちらも恥ずかしくなり、視線を落とす。
きっと私も真っ赤な顔をしているに違いない。
「惚れなおした?」
上擦る声で、照れ隠しで強がってみる。
「勿論です」
変に力の籠もった返答が即時返ってくる。
それが可笑しくてつい吹き出すと、コツン、コツンと足音が鳴り、落とした視界に白い靴が二足向かい合わせに並んだ。
顔を上げると、燈馬君の顔が、間近だ。
「~~っ、燈馬くんだってかっこよくてずるい」
男性は化粧とかしない筈なのに。髪型の手入れくらいしかしてないはずなのに。
どうして、着る物や立ち居振る舞いだけでこんなにも雰囲気が変わってしまうんだろう?
「ずるいって、何ですか?」
唇を尖らせた私に、心外だとばかりに燈馬君は言う。
「馬子にも衣装だなぁって思った」
そうじゃなければ説明がつかないじゃない、と私が言うと、
「そっくりそのままお返しますよ」
燈馬君はいつもと変わらず、からかうように応える。
けれど、その後に抱きしめてきた両腕は、いつもとは違った。
◆◆◆◆
「僕、水原さんの事が好きです」
「ずっと、好きでした」
名前がない。
なんて逃げ廻った、出会ってからの三年近くを思い返す。
ああ、もう、そんなになるのか、と改めて思う。
いつから、このもやもやっとした気持ちは始まったんだっけ。
もう、そのきっかけすら思い出せない。
どきりとすることが、あんまりにもあり過ぎて。
随分と長い時間誤魔化してきたなぁ、と自分自身、感心する。
「……私も、好き……だと思う」
この気持ちを、言葉にするなら。
近いのは「好き」だろう。
ただ、なんとなくのずれを感じる。
好きと言うには、なんだか、もう、気持ちが大きすぎる気がする。
さりとて、愛って言うのも大袈裟な気がする。
よくよく考えて、自分らしい表現を探す。
「うん、好きだ。……大好き」
頷きながら、噛みしめるように。
確認するように、言葉にする。
名前を与えて居なかった感情が、意味を持つ。
この動悸も、胸を締め付ける苦しさも、気恥ずかしさも、むず痒いくらいの幸福感も。
全部、イコールで繋がっていく。
◆◆◆◆
「ねぇ、私のこと、好き?」
傍らに立つ燈馬君に、そっと訊いてみる。
「好きですよ」
事も無げに、表情も崩さずに。
さも当然のように、燈馬君は即答する。
それが嬉しくて、胸がぎゅっと詰まる。
こんな思いを、私だけがするのは勿体ない。
「私も、燈馬くんの事、好きだよ」
言って、燈馬君の腕を取る。
見上げた顔は、ほんのり綻んでいて綺麗だ。
「これからもずっと、好きだよ」
幸せそうに目を細める様子が、本当に綺麗で、幸せで、胸が一杯で。
この気持ちも、「好き」の気持ちだと私は理解した。
この瞬間も、これからも。
何度だって。
私は、キラキラしたこの想いを見つけては名前を付ける。見つけては知っていく。幸せな気持ちで満たされていく。
二人でなら、きっと沢山の感情を見つけていけるし、名前を付けられるんだろう。
だから多分。
今落とされた唇から伝って感じる温かさや、微かに震えてる添えられた手の震えとか、熱くなりすぎて燃えているんじゃないかと錯覚する自分の頬とか、もうこれ以上縮まないってくらい締め付けられる胸の痛みというか痺れというか、そういうものも全てが。
きっと意味のあることで、名前の付けられることなんだろうなぁ、と私は思った。
いやもう中で終わらせてもいいんじゃね?とかいう内容でもう締めるだけだというのに全然締めないままもう一年半。
無理矢理終わらせました!
いや印刷媒介にしようかなぁと年末にちょっといろいろ頑張って進めたんですがもう中の時点で30頁でしかも蛇足が纏まらなくて……orz
いっそ、ご挨拶編カットしてしまえ!と思いまして切りました。
蛇足も綺麗に纏まりそうであればどこかで出すかもしれません……
これだけ引っ張っといてこのていたらくですが、とりあえず、完結ということにさせてくださいm(__)m
「まさか仲直り通り越して結婚するとは思わなかった」
香坂が呆れた様子でため息をついた。
「いつも思うけどさ。あんたたち、一足飛びよね」
「……そう思う」
思い切りがいいのは悪いことじゃないけどさ、と呟くその横顔は、ほんのり嬉しそうだ。
見慣れない盛装姿の、アップにしたその髪が、ゆっくりと頷くように縦に揺れる。
「……うん、良かった」
何が良かったのか。
それは言われなくても解ってる。
一番心配してくれていたのは香坂だ。
一番自責の念に駆られていたのは、香坂だ。
「絶対あんたたち幸せになれるよ。保証する」 だから、ブーケは私によこしなさいよ! と香坂が肘で小突いて照れ隠しをするその最中、コンコン、と渇いた音がドアから響いた。
「準備できましたか?」
燈馬君の声が、聞こえる。
「仕方ないなぁ。名残惜しいけどここは旦那様にお任せしますか」
香坂は芝居がかった言い回しでそう言うと、軽く手を振りドアを開ける。
その目の前に燈馬君がいたらしく、似合うじゃん! とか言いながら招き入れて。自分はさっさと外に出て行った。
──名残惜しいのは私も一緒だっての。
あと数日で別れる親友の後ろ姿を、微笑みながら見送るその場所から、今度は燈馬君が入ってきた。
一息分、燈馬君が固まる。
私も同じく、その瞬間、息が止まる。
お互いの着飾った姿を見るのは初めてではないけれど、やっぱり、この瞬間は特別なんだと思う。
まるで儀式のように。
きっと、お互いに、お互いの姿に見とれて、また恋に落ちている。
「……綺麗です」
吐息に混ぜるように、恥ずかしそうに、燈馬君は頬を赤らめた。
そのくせ、真っ直ぐこっちを見たままだから始末におけない。こちらも恥ずかしくなり、視線を落とす。
きっと私も真っ赤な顔をしているに違いない。
「惚れなおした?」
上擦る声で、照れ隠しで強がってみる。
「勿論です」
変に力の籠もった返答が即時返ってくる。
それが可笑しくてつい吹き出すと、コツン、コツンと足音が鳴り、落とした視界に白い靴が二足向かい合わせに並んだ。
顔を上げると、燈馬君の顔が、間近だ。
「~~っ、燈馬くんだってかっこよくてずるい」
男性は化粧とかしない筈なのに。髪型の手入れくらいしかしてないはずなのに。
どうして、着る物や立ち居振る舞いだけでこんなにも雰囲気が変わってしまうんだろう?
「ずるいって、何ですか?」
唇を尖らせた私に、心外だとばかりに燈馬君は言う。
「馬子にも衣装だなぁって思った」
そうじゃなければ説明がつかないじゃない、と私が言うと、
「そっくりそのままお返しますよ」
燈馬君はいつもと変わらず、からかうように応える。
けれど、その後に抱きしめてきた両腕は、いつもとは違った。
◆◆◆◆
「僕、水原さんの事が好きです」
「ずっと、好きでした」
名前がない。
なんて逃げ廻った、出会ってからの三年近くを思い返す。
ああ、もう、そんなになるのか、と改めて思う。
いつから、このもやもやっとした気持ちは始まったんだっけ。
もう、そのきっかけすら思い出せない。
どきりとすることが、あんまりにもあり過ぎて。
随分と長い時間誤魔化してきたなぁ、と自分自身、感心する。
「……私も、好き……だと思う」
この気持ちを、言葉にするなら。
近いのは「好き」だろう。
ただ、なんとなくのずれを感じる。
好きと言うには、なんだか、もう、気持ちが大きすぎる気がする。
さりとて、愛って言うのも大袈裟な気がする。
よくよく考えて、自分らしい表現を探す。
「うん、好きだ。……大好き」
頷きながら、噛みしめるように。
確認するように、言葉にする。
名前を与えて居なかった感情が、意味を持つ。
この動悸も、胸を締め付ける苦しさも、気恥ずかしさも、むず痒いくらいの幸福感も。
全部、イコールで繋がっていく。
◆◆◆◆
「ねぇ、私のこと、好き?」
傍らに立つ燈馬君に、そっと訊いてみる。
「好きですよ」
事も無げに、表情も崩さずに。
さも当然のように、燈馬君は即答する。
それが嬉しくて、胸がぎゅっと詰まる。
こんな思いを、私だけがするのは勿体ない。
「私も、燈馬くんの事、好きだよ」
言って、燈馬君の腕を取る。
見上げた顔は、ほんのり綻んでいて綺麗だ。
「これからもずっと、好きだよ」
幸せそうに目を細める様子が、本当に綺麗で、幸せで、胸が一杯で。
この気持ちも、「好き」の気持ちだと私は理解した。
この瞬間も、これからも。
何度だって。
私は、キラキラしたこの想いを見つけては名前を付ける。見つけては知っていく。幸せな気持ちで満たされていく。
二人でなら、きっと沢山の感情を見つけていけるし、名前を付けられるんだろう。
だから多分。
今落とされた唇から伝って感じる温かさや、微かに震えてる添えられた手の震えとか、熱くなりすぎて燃えているんじゃないかと錯覚する自分の頬とか、もうこれ以上縮まないってくらい締め付けられる胸の痛みというか痺れというか、そういうものも全てが。
きっと意味のあることで、名前の付けられることなんだろうなぁ、と私は思った。
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