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ベストコミュニケーション

ミネルヴァの梟終了時~2話までの間くらいの、ほんとごくごく初期のイメージで書きました。
まだ他人との距離感が掴めない燈馬君とそれを気にするお節介可奈ちゃん感が出せていれば幸い。

愛妻の日の何かを描こうと思ってたのに描けなかったよorz

2015.02.01 ちょっと修正しました。




「あの、水原さん」
 ポンと左肩を後ろから叩かれた。
 叩くというよりは、しっかり触るような、手を置いているような。
 振り返ると、燈馬が微笑みながら帰りましょうと声をかけてくる。
 いいけど、と言いつつも、可奈はため息をついて静かに首を振った。

 燈馬は不思議そうな面持ちで、首を傾げてその様子を見上げた。なんで可奈がため息をついたのか、それが理解できない。
 その様子を受け止めて、どう言えば上手く伝えられるか考えても可奈には不得手な分野だ。……単刀直入にしか言えないけれど仕方ない。意を決して正直に言うことにする。

「燈馬君さぁ、こうやって軽々しく触るのやめた方がいいよ?」
 文字通りきょとんと、彼は動きを止めて、見つめる。

 燈馬は話しかける際、躊躇なく相手に触る。
 話をするような仲になってから燈馬の動向に目が行くようになったけれど。彼は老若男女問わず、コミュニケーションを図ろうとする時にボディタッチをしている気がする。図る機会自体はあまりないから、見ているだけでは数回しかないけれど。
 あぁ、そういえばそもそも生まれ育ちが海外だっけ。だったらそういうのは当たり前なのかな、と思うけれど、ここは日本だ。
 日本人的に考えると、個人差はあれどあんまり親しい間柄じゃない人間に触られるのっていい気分はしない。
 他意無く起こした行動がマイナスになってしまうのは、燈馬にとってもよくないだろう。

「日本人は不用意に触られるのって嫌いな人が多いし、相手が女の子だったりしたら勘違いするよ?」

 日本で暮らしてるんだからそういうものも考えないと余計に孤立してしまう。ただでさえ変人だと遠巻きに扱われているのに。
 可奈がそういう細々した所を気にしていられるのも一緒にいる時だけだ。四六時中一緒にいられるわけではないし、一人で行動しているときにはフォローのしようが無い。
 
 苦々しい表情で語る可奈に、不思議そうに燈馬は首を傾げた。
「水原さんも、僕が触るの嫌なんですか?」
「私?! 私は……ホラ、あんたが触ってくんの知ってるし解ってるから平気だし」
 急にふられた質問に可奈が慌てて答えると、燈馬はくすり、と微かに笑った。


──水原さんは、触っても平気なんだ。
 それならばこの先不用意に触ってしまっても、彼女は自分を嫌悪したり困惑したりはしないのだろう。


 ほっとしたような、嬉しいような、暖かいものが燈馬の胸に込み上げてくる。
 自然と、頬が緩む。
 
「解りました。気をつけるようにします、けど」
「けど?」
 引っかかるもの言いに、思わず可奈は聞き返した。
「水原さんには今まで通りで大丈夫ですよね?」
 燈馬はそう言うと人懐こそうにほんのりと笑い、首を傾げた。
 可奈は一瞬その姿に見とれて、言葉に詰まる。


 それは、気を使わないで話ができるくらいの友達として認識されているということだろうか?
 普段通りにコミュニケーションが取れる相手として。
 多分、この学校で。
 誰よりも先に。


「……いいけど?」
 言葉尻が、思わず上がった。


 仕方がない。
 この日本での常識からずれた少年を軌道にのせてあげられるのは、自分だけだ。乗り掛かった船だ。袖振り合うもなんちゃらとか言うし。最後まで面倒見てやらないと!
 誰に言うでもない建前を心の中で精一杯頷きながら叫ぶと、気恥ずかしくてなんだか直視出来なかった燈馬の顔をもう一度見る。

 心底嬉しいといった面持ちで、燈馬は右手を差し出していた。
「じゃあ改めて」

 それは、握手を求めているのだろうか。
 それとも手を繋ぐつもりの手なのだろうか。
 にこにこと微笑む燈馬の顔には邪気の欠片も見当たらなくて。


 ……どちらにせよ。


 可奈はその手に、そっと自分の手を伸ばし、重ねた。

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