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チョコレート事件

バレンタインのSSを書き始めたはいいものの……おわりません(涙
うううういつもながら追記するような形になりますがご了承くださいぃぃぃ!!!


※なんとなくタイトル変えました。




『チョコレート事件』


 チョコレートを口の中で溶かしながら食べると、キスの四倍気持ちいいらしい。

「そんなん、したことないからわかんないんだけどさ。それじゃ、チョコ食べてるときよりキスってそんなよくないんだ?」
 可奈はバリバリと板チョコを食べながら首を傾げる。
「なんかさ、舌の上で溶かしながら食べるらしいよ?」
 脳内物質がどうたら、という科学的根拠が羅列するケータイ画面を見せつけられながら、肩を並べる香坂とふむふむと頷きあい、顔を見合わす。

「……解る?香坂」
「いやわかんねぇ」

 香坂の手の中にあるのも板チョコだ。


 季節は冬。お正月も過ぎるとスーパーやらコンビニやらで特設棚を占領するのは受験にあやかる飲食物と製菓材料ばかりとなる。
 特売品とされる中に、一般的にこの時期一番の売り上げとなるだろう板チョコが入るのは必然となり、カバンのお供にと選んでしまうのもこれまた必然だ。チョコレートの話題からキスの話になるのは、必然……とは言えないけれど。

「てか、そもそもキスする相手がいないし。時期的に自分が食うんじゃなくて渡す相手探すだろ」
 みんなで顔を見合わせて笑うけれど、可奈だけ最後に二人に指さされる。
 明るく響いた笑い声が、止まる。

「可奈はチョコより先に実践しなきゃな」
「そうそう、そんで燈馬君にお高価いチョコでもねだってちゃんと四倍気持ちいいか食レポ報告してね」
「なんでだよっ!」
 可奈が憤るのも気にせず、二人はぼりぼりチョコレートを齧る。
「だってもーいい加減あんたら付き合ってるでしょ? つか付き合ってないワケがない」
「付き合いましょうそうしましょう、って言ってないだけじゃんあーバカらしい」
「実際付き合ってないんだから、そーゆーの……ないしっ」
 まごまご俯いて手先を睨む可奈に、梅宮が唐突に言い出した。

「『付き合う』の定義とは?」

 香坂も可奈も、口を動かすのを止めて梅宮に注目する。
「どこかに行くのについてきてくれたりするとさ、『付き合いがいい』とかって言うじゃん?」
 国語の問題かよ、とツッコミを入れながら可奈が嘯く。
「そんなん言葉のアヤじゃん? そういう『付き合う』と男女の『付き合う』は違うじゃん」
「んー……そう言われてみると、どっちも中身は同じかもね?」
 香坂も、銀紙を畳みながら頷いた。
「相手と『付き合う』時にどこまで許せるかってぇラインが違うだけであって、自分の行動や時間を相手に合わせるのは同じだから。定義としては同じってことか」
「えぇなにそれそこまで考えてないよ面倒くさい」
 反論する可奈を無視して、香坂と梅宮は頭を寄せてひそひそと話す。
「意外とそう考えると難しいよね。そうそう出来ないことよ」
「燈馬君は本当そういう意味でも『付き合い』いいよねー」
「ホントホント」
「可奈は考えるより感じるタイプだから全然気にしてないだけだよな」
「そうそう、理屈で理解してないだけ」
 当然、内緒話のボリュームほど落としてはいないし距離も近いから、可奈には内容は丸聞こえだ。二人は半目で可奈をじぃっと見つめている。
 二人で結託して可奈を責めるような空気に途端に居心地が悪くなり、可奈はフンと鼻を鳴らして窓の外を見る。
 雪でも降りそうなどんよりとした灰色の空が、なんだか気持ちとシンクロしている。


 ……あぁ、面倒くさい……
 受験も対人関係も何もかも、考えなくていい世界に行きたいなぁ。
 付き合うとか付き合わないとかどーでもいいっての。


 可奈はぼんやりと、そう思った。


---------



「食べます?」
「いいの?!」
「貰い物ですから」
 いつものように立ち寄った燈馬の家で、来客用テーブルの上に置かれた箱をみる。
 箱に入ったチョコレートだ。
 好奇心の赴くまま蓋をあけると、数センチ四方くらいの小さく粒が規則正しく並んでいる。これは、先程食べた板チョコが霞むような高級品に違いない。チョコレート専門店とかの所謂「ショコラティエ」が作った物だろう。
 雑誌の中でしか見たことの無い物体に、自然とテンションが上がってしまう。

「……時期的にバレンタインのだと思うんですけどマジでいいの?」
「依頼のお礼ですから時期的な物はあれど他意はないですよ。お気遣いなく」
 思わず敬語で訊いてしまった質問に表情も変わらず軽く返されて、じゃあお言葉に甘えて、と可奈は手を伸ばす。ほんの少し指先が震えるのはご愛敬だ。

 ピンクの模様がついてるやつも可愛いけど、赤いコーティングされてるのも美味しそう……と目移りしながら手前の列の一つを選ぶと、そっと手に取って四方から眺めてみる。
 自分じゃ買わないだろうし、こうまじまじと見つめる機会もそうそうないだろう。普段見るようなチョコレートとは質感が全く違う。香りだって違う。
 恐る恐る、口に入れてみる。
 一口で食べるのが勿体無いから半分齧って咀嚼する。
 2度噛んだところで思い出す。口の中で溶かしてゆっくり食べないと勿体無い。

 口に含んだ瞬間に、カカオの香りが鼻に抜ける。苦いとか甘いとか味覚ではなくて、本当に良いものは口だけではなくて色々な感覚で楽しむ物なんだと再認識する。普段飲んでいるココアなんかとも比べようがないくらい鮮烈な青い風味。これが、板チョコと同じチョコレートだとは。


 動きが止まった可奈を、燈馬は何事かと訝しげに見る。
 驚いた顔のまま、口角がにまにまと上がっている。相当美味しかったのだろうか。声にならないうなり声のようなものを、堪えきれない様子で立てていた。

「……美味しいですか?」

 燈馬の声にハッと我に返り、とろとろと舌先で味わっていたものをごくりと喉に落としてしまった。あああ勿体無い長く味わっていたかったのに、と思うと同時にまた思い出す。


『チョコレートを口の中で溶かしながら食べると、キスの四倍気持ちいいらしい』


 先ほどの半分はそういう感覚より何より口に含んだ瞬間の味わったことのない風味に感動してしまった。とろけ方も滑らかだし、半粒でも濃厚だし、と食べる本能に集中してしまった気がする。
 でも本来、食べ物なんだからそれが正しい食べ方じゃないだろうか。
 キスより気持ちがいいとか、味とか香りとか関係ないじゃない。どういうことなんだろう?


 残りの半分を、そろりと口に運んでみる。
 今度は、舌先の感覚に集中してみる。
 芳醇な香りを放つ物体が徐々に徐々に溶けていく。溶けていく過程でするりと舌の上を滑りながら纏わり付いていく感触に可奈の胸は何故かドキドキとしてきた。
 ……何だろう、コレ?
 気持ちいいとかそういう感じじゃないけど、なんかいけない事をしている感じがする。
 そういう事考えながら食べるからかな?


 箱に詰まった残りを、惚けたまま、可奈はまた見つめる。
 答えずにチョコレートを見つめている可奈を燈馬もまた見つめている。

 ……なに考えてるんだろう?
 水原さんのことだから作れるかどうか、とかこれで一粒何円分だろうか、とかそういうことなんだろうか。


「やっぱり水原さんもそういう箱に入ったようなチョコレートは特別なんですか?」
 言われて初めて、可奈は燈馬に顔を向ける。
 頬を真っ赤に染めて、なんとも言えない、緩んでるような、顰めたような不思議な表情。
「え? あ、いや、うん!! そ、そう……」
 「特別」と言われたその言葉が係るのは当然ながらチョコレートなのだけれど、考えてた事を見透かされて言われた気がして頭に血が上る。
 『キスの四倍気持ちいいかどうか』このチョコレートで検証しようとしているのを、燈馬は察知してるんじゃなかろうか?
 普段何考えてんだか解らないけど、コイツの洞察力は物凄いから油断できない。
 可奈は慌てながら、どう答えて良いのやらと一生懸命考える。

「でしたら、どうぞ? それ箱ごとあげますよ。持って帰って警部達と一緒に食べて下さい」
 じつに軽く、燈馬は言う。
「え! いや、さすがにそれは悪いよ!」
「たいした依頼では無かったのでいらないと断ったんですけど押し切られてしまって。僕もチョコレートは嫌いではないですが、こういうのって美味しく食べて貰った方がいいと思いますし」
 破顔しながら食べるということは、多分可奈は相当気に入ったのだろう。そういう顔を眺めるのは悪くないけれど、ずっと見つめ続けていたら落ち着いて食べられないだろうから嫌がらせになってしまう。
 ならばゆっくり食べさせてあげたい、などとチラっと思いついて口にしただけだったのだけれど、可奈は真っ赤なまま、ぶんぶんと頭を振って辞退しようとしている。
「いやいやいや! だって燈馬君が貰ったんだしっ!」
「いや本当に、そんな、執着のある物ではないしそこまで気にしなくていいんですけど。というか、いつもなら止めても勝手に食べちゃうじゃないですか。どうしたんですか?」
「じ、じゃあさっ、せめてさ、一つくらいは食べなよっ」
 可奈は慌てながら箱から一粒拾ってデスクに座ったままの燈馬に駆け寄ると、その口にチョコレートを押し込んだ。受け入れ準備をしていないところに無理やり突っ込んだ形になったわけだから、指先が微かに燈馬に食まれてしまい、可奈は余計にあわあわと焦ってしまった。
 慌てて手を引いて燈馬の様子を見ると、彼は特に気にしていないようで、ふむふむ、と与えられたチョコレートを味わっている。

「あ、本当だ。美味しい」

 無邪気に笑うその顔を見て、いかがわしいことを考えていた先ほどの自分を思い出す。……いや最初の半分を食べてる瞬間は純粋に味わってたんだから燈馬と同じ感想や表情をしていた筈だ。だって本当に美味しかったし、我を忘れてしまったのだから。



 気まずくて燈馬を直視できないまま時が過ぎ帰宅する時間になると、可奈は彼から押し付けられた箱を大事に抱えて出る準備をする。。

 まぁ、燈馬君がいいって言ったんだからいいんだよね。……大事に食べよう。

 燈馬に手を振り可奈は大きく溜め息を吐きながら、玄関から一歩、足を踏み出した。 


---------



「あら、美味しそうなチョコじゃない」
 居間で蓋を開けて腕組みをしていると、後ろからひょこりと覗いた母に楽しげに声を掛けられた。
「燈馬君から貰ったの?」
「うん、そう」
 返事しつつ後ろの手が伸びかけたのを見て、可奈は大急ぎで箱を抱えて防御する。
 宙で行き場を無くした母の手がするすると戻って口元に運ばれ、ふふふ、と楽しげな笑い声が頭上で聞こえる。まずい、母さんに勘違いされてる! と思ったけれどもう遅い。
あらやだ母さん解っちゃった♪ と弾むような声が聞こえる。
「バレンタインのチョコかぁ。ゴメンゴメンそれじゃ全部可奈のだわね」
「ち! 違っ!! コレは燈馬君の貰い物で、家族で食べなってくれたやつで!」
「いいのよ独り占めして。父さんには黙っといてあげるから部屋で食べなさい」
「だから違う!!」
 可奈の言い分なんて聞かずに、鼻歌を歌いながら足取り軽く母はキッチンに舞い戻る。その後ろ姿を見送りながら、持ったままの箱を可奈はまた見つめ直した。
「大体……まだバレンタインじゃないじゃん。何で勘違いするかなぁ……」
 そういう意味を込めて渡すとしたら週末だし、そもそもコレはただの貰い物。深い意味なんてあるわけないのに。


 食べたときの大惨事をはた、と思い出して、可奈は母の言葉通り部屋に戻る。
 また変な反応をしてしまいそうだし、父や母の前でそんなものを見せた日には気まずくて顔を合わせられなくなりそうだった。

 まだ二粒しか食べていない箱の中には、茶色い粒が鎮座している。つやつやと室内灯を受けて輝く一片を摘まんでじっと見つめる。

 このチョコレートは「美味しい」のだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 気持ちが良いとかそういう感情がわき上がる訳がない。
 さっきドキドキしたのは気まずかっただけであって、チョコレートのせいだとかそういうものではない。
 だからまたこの一粒を食べたところで、「美味しい」という感動以上のものはかき立てられない。はず。


 歯を立てるとぱきりと割れて、中からとろりとペースト状の何かが口に広がる。僅かに苦いような辛いような、刺激が舌に乗る。中身は洋酒の入ったクリームのようだ。ラム酒かシャンパンかどちらだろう。舌で探るうちに甘さが抜ける感じがし、前者だろうと推測された。
 最初に食べた物は中には何も入っていないタイプで一口全てがチョコレートだったけれど、今回手に取ったのはボンボン・ショコラだ。味が全然違う。純粋にチョコレートだけのものも美味しいけれど、こうやって見た目だけじゃなく中身もそれぞれ違うというのは楽しいし、何より飽きない。いくらでも入りそうだ。
 先程燈馬の口に放り込んだのも確か同じ形の色違いだった。だとしたらあちらにも洋酒が入っていたのだろうか。他に同じ見た目の物は無いから、もしかしたらそちらは別の中身だったのかと思い当たり、若干損した気分になった。折角だから全部の味が解ったらよかったのにな、などと、自分で無理矢理食べさせたにも関わらず唇を尖らせた。

 瞬間。その彼に食まれた指先とその感触を急に思い出してしまった。
 僅かに口の端に引っかかっただけの筈なのに、その熱さと柔らかさをしっかりと覚えている。ゆっくりと咀嚼する口の動きを、口に入れた瞬間の驚きの表情から変わる嬉しそうな笑顔を、美味しいと細められた目を、全部を思い出す。


 とろ、と、口腔内に残っていた塊が崩れる。
 暖かくて、柔い感触。堪えきれなくて咀嚼してしまう、口の動き。
 それはまるで、さっきの。燈馬の。



 やばい、……やばい、どうしよう。


 頭に血が上り、また可奈の心臓が早鐘を打ち始める。
 おかしい。触れたのは指先で、舌先で感じる感覚とは全く別の物だ。同じチョコレートを食べているんだから口の動きだって同じになるのは当たり前だ。それなのにどうしてそういう色々なものを結びつけて想像してるんだろう? 
 梅宮が変なこと調べるから! 香坂が無茶ぶりするから!
 意識なんてしたことなかったのに、食レポなんてしろって言ったから!!


 口の中にはもうチョコレートは残っていない。だけどむしゃくしゃしていて躊躇無く残りも頬張る。ドキドキが止まらないまま衝動で噛み砕こうとして二度歯を立てた後、罪悪感から躊躇する。
 酒の風味と甘みとチョコのほろ苦さが、また舌の上に広がる。溶けかかった破片がつ、と滑る度に、どう表現したらいいのか解らない背徳的な気分になる。
 アルコール分を感じているせいだろうか。件の予備知識のせいだろうか。
 ……いや解ってる。ラム酒のせいじゃなくて、もうキスの四倍気持ちいいだとか燈馬君で試せとかそういう事意識しまくっちゃったせいだ。
 チョコの出所が出所だから意識しないで食べろっていうのがムリだし、でもだからといって母に渡していろいろ言い訳をするのも正直億劫だった。
 けれど、ふと、可奈は気付いた。

 ドキドキしようが何しようが、誰にも見られなきゃいいんじゃない?



 燈馬を思い出して気まずくなろうが、燈馬は可奈がそんな事を考えながらチョコを食べてるなんて知らない。
 食べ方に指定なんてないんだし、好きに食べればいい。誰にも知られなければ、気まずい事なんてありはしない。
 なにせ美味しいチョコレートなのだ。気持ちの上ではどうあれやっぱり食べたい。





 かくして、いとも簡単に欲求に負けてしまった可奈は、チョコレートをちまちまと囓り舌の上で転がしながら色々な味を楽しんだ。想像したり思い出したりしてしまうのはもうどうしようもないから気にしないことにして。悶えている姿は一人きりの室内だから誰にも見られない。気兼ねなくチョコレートを堪能できる。
 勿体ないから大事に食べようと思っていたはずなのにどんどん減っていく箱を横目に、それでも手は止まらない。
 それもこれも、このチョコレートが美味しすぎるせいだから仕方がないや、と。
 もう自制の効かない身体を前に、可奈は考えるのを放棄した。

 箱が空になるのに、時間は全く掛からなかった。


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