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残りの1コ(想可奈)

そんなわけで、↓の記事で言っていたブツでございます。
もともとは携帯用拍手SSのつもりで書いたので、アレな感じです。
(一つしかUPできないみたいだから、3倍甘く!3倍色っぽく!を目指して)


してることは色っぽいんですけど、
そこはわたしの文章、色気がないです。

なぜだ、なぜなんだー!とセルフツッコミつつ。

本文はこちら~





















 「あ」
 声を聞くよりも早く、可奈は最後の一枚を口に運ぶ。
 「それ、楽しみに取っておいたんですけど……」
 「そうなの?もう食べないのかな、と思った」

 仕事をしながらつまんでいたのは見ていたが、一枚を残してそこから先は手をつけなかった。
 十分待っても二十分待っても、最後の一枚が無くならない。
 いらないんなら貰っちゃうよ?
 可奈が手に取っても、想はパソコンの画面を凝視している。
 気にする様子もないので、そのままソファーに持って行き、ぱくりと食べた。
 ……だって、勿体無いと思ったんだよ。

 「水原さんが作ってくれたものを、残すわけありません」
 心の声が聞こえているかのように間髪入れずに、想は言う。
 そんな風に思ってくれるのは嬉しいが、正直、聞いてて恥ずかしい。
 「クッキーくらい、また焼いてあげるのに」
 「……今食べたかったんですよ」
 気がそれたのか、可奈の隣にどかっと座った。
 その顔はむくれている。
 かわいい。
 どこのオコサマだ。
 そんなになるくらい楽しみに最後の一枚を残してくれていたなら、作った甲斐がある。
 それなら。
 「また作るよ、ちょっと時間掛かるけどいいよね?」
 台所借りるね、と可奈が立ち上がった。
 想は、その手を取って制止する。

 「『今』食べたいって言いましたよね」
 手を引っぱられ、すとんと元いた位置に引き戻される。
 ん?どういうこと?
 「今、水原さんが食べた一枚を、味見させてください」

 それってどういう意味?
 問おうと口を開いた瞬間、言葉を紡ぐ前に唇を奪われた。
 あわてて引き剥がそうと手を出すが、両手とも難なく捕らわれる。
 後ろに身体を引こうものなら、体制が崩れてソファーにに押し倒されるだろう。
 それは、さすがにいろいろやばい。逃げられない。 
 息をつこうと身じろぎをすると、さらに深く深く貪ろうとしてくる。
 待て待て待て。
 どうしてそんなにアグレッシブなんだ!
 抗議しようと声をあげたが、すべて呑み込まれてしまう。
 必死にもがいてもどうにも逃げられなく、むしろ篭絡されているような気分になり。
 諦めて脱力したころ、ようやく開放された。 
 
 ぜーぜーと肩で息をつきながら、さっきまで拘束されていた手首を見る。
 ほんのり、赤くなっていた。
 結構本気で抵抗したのになぁ。
 普段は私より弱くてもやっぱり男なんだよなぁ、気をつけないと。
 ……ここまでされといて、気をつけるって何を?
 自分で考えてて思い当たったのか、可奈はさらに真っ赤になって自爆した。
 
 想は、涼しい顔でこちらを眺めている。
 なんで平気なんだよ、あいつは~!!
 ずるい、ずるい!
 「これじゃ……味なんかわかんないでしょ」
 拗ねるように恨めしそうに、可奈は口を開く。 
 顔の火照りも収まらず、ひどい顔をしている気がして、想の顔を睨んでやれない。
 逸らした頬に手が当たる。 
 絶対向いてやるもんか。
 手が顔を導こうとするが、可奈は力ずくで反抗した。
 ほっぺたがつぶれ、変な顔。
 それを見た想が、声を殺して笑う。
 だんだん腹が立ち、添えられた手を引き剥がし、想をきっと睨んだ。
 心底面白いといった風で、想はにこにこしている。
 ……なんで私、真剣に腹立ててるんだろう。
 こいつはもともとこういう奴だった。
 「とってもおいしかったですよ」
 笑いに震える声で、想が言った。
 それは、クッキーの味って意味じゃないだろ、なんてツッコミを入れたら何をされるか。
 なんとなく、想像がつくので言わない。  
 はがした後、ずっと握っていた掌の体温が心地よくて、とげとげ毒づいていた気持ちがほんのちょっぴり癒される。
 ああ、もう、仕方ないよな。
 私、こういうコイツが好きなんだから。




 「ところで水原さん、コーヒーのおかわり要りますか?」  
 不意に問われ可奈が視線を上げると、想の瞳が、すぐ近くにあった。
 コーヒーの香りが、鼻腔をくすぐる。



 どうせ、コーヒーのおかわりも口移しなんでしょ? 
 ……仕方ない。
 今度はこっちが味見をする番だ。



 今度は静かに目を閉じて。
 可奈は唇が落ちるのを待った。
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